ツール

40dBアンプ
                       松本 実子
                       監修:木村 佳敬

 

 NMR測定では様々な場面で信号を増幅させる必要があります。今回は入力信号を約40dB増幅させる10〜300MHzの広帯域で使用するRFアンプを製作しました。

回路の作成

信号のONとOFFを切り替えるスイッチとしてADG918を使用し、信号を増幅させる素子としてGali74を使用しました。以下が回路図と実際の回路基板のプリントパターンになります。NMRでは、RFパワーをかけているときには、アンプをOFFにしておくのでスイッチを加える必要があります。  

 回路図はこちら
 プリントパターンはこちら

 入力した信号は、Gali74によって約25dB増幅したのち、抵抗で50Ωのアッティネータを形成することで6dB減衰します。その後もう一度Gali74をはさんで約25dB増幅し、3dB減衰させます。Gali74によって増幅した信号を、すぐに減衰させる理由は、反射によって大きな信号がGali74に入ってくることを防ぐためです。こうして2つのGali74を並べることで、トータルで約40dB増幅するアンプを制作しました。

回路図の設計の後にこの基盤に必要な電子部品を丁寧にはんだ付けします。アンプを製作する際にはGNDの電位をしっかりとつなぐことが重要となります。2段の+40dBのアンプなので、GNDや実装に注意します。GNDがしっかりとれていないと発振やノイズの原因になります。写真が実際の基盤ですが、いたるところにスルーホールを開けています。この基盤をケースに実装すれば増幅回路の完成となります。
写真 


回路の性能

 この回路の増幅度(dB)、IP3、アンプを通す前と後でのノイズなどを測定しました。
freq

 周波数による増幅度の推移のグラフは、入力前にアッティネータをいれ、44dB減衰させていますので、入力が-44dBmになっており、-4dBmが+40dBの増幅に対応します。
 増幅度は50MHz、100MHzで40dB程度、その後入力のdBmに対してほぼ線形に減衰していきます。10MHz〜300MHzで+36dB以上のゲインがあります。

 位相ノイズは、アンプをいれる前20dBc/Hz@1kHz、72dBc/Hz@10kHzから、アンプをいれると、15.5dBc/Hz@1kHz、71.6dBc/Hz@10kHzとなり、実用上問題ないと考えられます。

 続いて50MHz、100MHzでのIP3、IP2を調べるため、それぞれの周波数で入力パワーを変えていき、f、2f、3fでの出力を記録し、グラフにしました。
50 100

IP3は50MHzで-14.5dBm、100MHzで-14dBmとなることを確認しました。

 IP3が-14dBmなので、入力信号として-34dBm以下にすれば、40dBのスプリアスフリーダイナミックレンジを得ることができます。

ADG918が200円で、Gali74は一個300円程度なので、非常にローコストにNMRの広帯域アンプを作ることが出来ます。  
                                             2011年8月31日