Ultrasonic Team (T. Yanagisawa, Hokkaido Univ,)    

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Apr 17, 2021
全学教育科目「物理学I・II」コンテンツダウンロードはこちら。
物理学II(水曜2講目:担当 柳澤)を受講している学生諸君へ
上記リンクから講義資料をPDFでダウンロードできます。

現代物理学(月曜5講目:「超音波の世界」担当 柳澤)を受講した学生諸君
次のリンクから講義資料をPDFでダウンロードできます。(講義中にお知らせしたパスワードで暗号化されています。)

令和5(2023)年度学術変革領域研究(A)
アシンメトリが彩る量子物質の可視化・設計・創出
(アシンメトリ量子)

A02:精密物性測定によるアシンメトリ量子物質の新機能開拓(柳澤達也) 課題番号:23H04868
の助成を受けています。

平成25~27年度 日本学術振興会
頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業

「 核物質を含む化合物の強相関電子物性研究のための日米欧ネットワークの構築 」北海道大学 (R2501)


「これからの予定」
May. 29-31, 2024 アシンメトリ量子 領域全体会議 (於 東広島芸術文化ホール)
Jun. 30- Jul 5. 2024 ICM2024 (於 Bologna)
Sep. 16-19, 2024 日本物理学会第79回年次大会 (於 北海道大学)
「これまでの研究・アウトリーチ活動」
Mar. 27, 2024 国立台灣師範大学 理学部物理学科セミナー にて講演 (Hokkaido Univ. Summer Instituteの紹介) (於 台北市, 台灣)
Mar. 18-21, 2024 日本物理学会 2024年春季大会 (オンライン)
Mar.12-22, 2024 パルス強磁場実験 (於 東京大学物性研究所)
Dec. 12, 2023 Hokkaido University - NIMS Joint Graduate School Program, Student Seminar にて講演 (於 物質材料研究機構)
Dec. 7, 2023 強磁場科学研究会「強磁場研究における次世代ネットワーク形成とサイエンスの新展開」にて講演 (於 東北大学金属材料研究所)
Sep. 23-Oct.8, 2023 パルス強磁場実験 (於 HLD Dresden, Germany)
Oct. 11, 2023 H-Physics workshop: Topology, spin-orbit interactions and superconductivity in strongly correlated quantum materials under extreme conditions にて講演 (於  Grenoble France)
Aug. 30-31 A01・A02 トピカルミーティング『アシンメトリ量子物質を如何に可視化するか? 〜ミクロ測定とマクロ測定の連携による研究戦略〜』 主宰 (於 北海道大学)
Jan. 20-30, 2023 パルス強磁場実験 (於 HLD Dresden, Germany)
Dec. 22, 2022 GIMRT, REIMEI and IRN Aperiodic joint international workshop "Superconductivity, Structural Complexity and Topology of UTe2 and Aperiodic Crystals"  にて講演 (於  東北大学金属材料研究所)
Jan 24, 2022  HLD institute seminar (HZDR Dresden, Germany) にて講演
Jan 20-31, 2022 パルス強磁場実験 (於 HLD Dresden, Germany)

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Highlights

Apr 16, 2021
詳しくは<a href='https://phys.sci.hokudai.ac.jp/LABS/kyokutei/vlt/yanagisawa/Kaleidoscope/PRL_2021.htm
'>こちら</a>
Apr. 12th 2021
米国物理学会誌(Physical Review Letters)に、UNi4Bの電気四極子応答に関する論文が掲載されました。詳しくはこちら
プレスリリース 北大 / 北大理 / 東北大金研
海外のサイト  EMFL / MGML
報道  科学新聞 2021年5月21日第四面記事 / Optronics Online
詳しくは<a href='https://phys.sci.hokudai.ac.jp/LABS/kyokutei/vlt/yanagisawa/Kaleidoscope/QKE_2019_01.htm
'>こちら</a>
Aug. 6th 2019
米国物理学会誌(Physical Review Letters)に、(Y, Pr)Ir2Zn20の単サイト四極子近藤効果の超音波測定に関する論文が掲載されました。詳しくはこちら

プレスリリース 北大
プレスリリース 広大
プレスリリース 北大理
詳しくは<a href='https://phys.sci.hokudai.ac.jp/LABS/kyokutei/vlt/yanagisawa/Kaleidoscope/SOS_PRB2016.htm
'>こちら</a>
Aug. 24th 2016
米国物理学会誌(Physical Review B)に、SmOs4Sb12の静水圧力下高周波超音波測定に関する論文が掲載されました。詳しくはこちら
詳しくは<a href='https://phys.sci.hokudai.ac.jp/LABS/kyokutei/vlt/yanagisawa/Kaleidoscope/SOS_JPSJ2016-01.htm
'>こちら</a>
Mar. 18th 2016
日本物理学会誌(Journal of Physical Society of Japan)にSmOs4Sb12のパルス強磁場下弾性応答に関する論文が掲載されました。詳しくはこちら
詳しくは<a href='https://phys.sci.hokudai.ac.jp/LABS/kyokutei/vlt/yanagisawa/Kaleidoscope/URS_PRB2013-01.htm
'>こちら</a>
Nov. 26th 2013
米国物理学会誌(Physical Review B)にURu2Si2のパルス強磁場下弾性応答に関する論文が掲載されました。詳しくはこちら

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Electric Quadrupolar Contributions
in Magnetic Phases of UNi4B

Apr 12, 2021
Researchers from Japan and the Czech Republic, together with scientists from the HLD, have succeeded in identifying that electric quadrupoles play an important role in the magnetic order of the honeycomb-layer compound UNi4B. The scientists showed that these quadrupoles maintain their degrees of freedom without ordering at the center of a magnetic vortex arrangement (left panel in the figure).

In this study, the cooperation partners combined ultrasound technique, which can sensitively detect orbital degrees of freedom, with the advanced high-magnetic-field generation equipment at the HLD and the High Field Laboratory for Superconducting Materials at Tohoku University. The researchers performed precise measure- ments of the electric quadrupoles derived from the orbital degrees of freedom in the vortex magnetic state of UNi4B. They observed strong correlations between the magnetic vortices and electric quadrupoles.

The elastic constants show large variations in magnetic-field regions where the vortex magnetic structure changes. This indicates that the quadrupole response evolves rapidly in magnetic field (right panels in the figure). Here, phase II represents a magnetic-toroidal dipolar order showing a vortex magnetic structure. The response of the quadrupoles depends strongly on the in-plane direction of the applied magnetic field. For H || [01-10], a phase V, which does not exist for H || [2-1-10], appears at high magnetic fields and low temperatures.

Further, the contour plot shows a significant difference in the elastic constant C66 for the two field directions, although there is no difference in the magnetization. From the blue and red contrasts in the ordered pha- ses, we can conclude that the electric quadrupoles play an important role in the vortex-like magnetic structure of this system, modifying the spin-reorientation process as well.

Figure: (Left panel) Crystal structure, magnetic vortices, and electric quadrupoles in UNi4B. Magnetic field-temperature phase diagram of UNi4B: (middle panel) the magnetic field is applied along the b-axis, (right panel) the magnetic field direction is along the c-axis. The color code indicates the changes of the C66 elastic constant.


These findings advance our understanding of the fundamental phe- nomena related to the interaction between quadrupolar degrees of freedom and magnetic vortices. This might provide a cornerstone for the realization of completely new quantum-information devices that control electronic degrees of freedom in solids in future applications.


For more information please see our paper: T. Yanagisawa, H. Matsumori, H. Saito, H. Hidaka, H. Amitsuka, S. Nakamura, S. Awaji, D. I. Gorbunov, S. Zherlitsyn, J. Wosnitza, K. Uhlířová, M. Vališka, and V. Sechovský, Phys. Rev. Lett. 126 (2021) 157201.

(also available on arXiv:2103.02391 [cond-mat.str-el])


Acoustic signature of the single-site quadrupolar
Kondo effect: finding the last missing piece of the puzzle

Aug 06, 2019

Abstract
A direct evidence for the a single-site two-channel (electric quadrupolar) Kondo effect is obtained by ultrasonic measurements on the diluted Pr compound Y_0.966 Pr_0.034 Ir_2 Zn_20 at very low temperatures down to 0.04 K. The elastic moduli (C11−C12)/2, corresponding to the Γ3(E)-symmetry electric-quadrupolar response, reveals a logarithmic temperature dependence in the low-magnetic-field region below ∼0.3 K, where non-Fermi liquid behavior in the specific heat and electrical resistivity have previously been reported. This logarithmic temperature variation manifested in the Γ3 quadrupolar susceptibility was the last missing piece of the puzzle to demonstrate this long-standing issue, since it had been theoretically predicted in 30 years ago.

For more information please see our paper: T. Yanagisawa et al., Phys. Rev. Lett. 123 (2019) 067201.

(also available on arXiv:1907.06284 [cond-mat.str-el])


日本語解説
「超音波で観る固体中の電子 〜30年来の謎「四極子近藤効果」を実証〜」

たくさんの電子を集めて冷やすと液体のようになる

「電子」は、我々の生活においてもっとも身近な素粒子です。しかし、固体中で電子が多数集まると、単一の電子とは異なる振る舞いを示します。金属中において電気の伝導を担う電子は、初等物理学では自由電子(理想気体模型)として扱われますが、強相関電子系と呼ばれる一部の化合物における伝導電子は、もはや自由では無く、流体モデルとして扱われます。そこでは電子間に様々な相互作用が働き、それぞれの電子は相互作用の衣をまとった準粒子とみなされ、その結果、電子間の相互作用が繰り込まれた電子の有効的な質量が通常の電子の質量の1000倍にも達する「重い電子」状態が現れます。このように強く相互作用する電子(フェルミ粒子)を記述する有効理論モデルは、1956年にソビエトの物理学者レフ・ランダウによって導入された概念である「フェルミ流体」として記述されます。

一方、「近藤効果」とは、金属中の伝導電子が不純物イオンの内部自由度を変化させる過程で生じる電子の多体効果です。その先駆けとなる理論研究は、1964年に日本人物理学者の近藤淳によって報告され [参考文献1]、現在では希土類化合物における半金属状態など多彩な物性を演出していることが知られています。上記の重い電子状態でも、近藤効果が本質的な役割を担っているのです。

 

30年来の謎「四極子近藤効果」とは?

1980年代に、上記の近藤効果を拡張した多チャンネル近藤効果が提案されました。ここでの多チャンネルとは、近藤効果で電子が用いる内部自由度が複数あることを意味します。

電子は磁石としての性質を担うスピン自由度と、電気としての性質を担う電荷・軌道自由度を持ちます。原著論文における近藤効果は、金属中の伝導電子と磁性不純物がそれぞれの電子のスピン自由度(チャンネル数は1)を用いて束縛状態を作ります。その次数を1つ上げた「2チャンネル近藤効果」では、スピン自由度に加え、局在電子の持つ軌道自由度に由来する異方的電荷分布である電気四極子自由度(チャンネル数は2)を用います。この現象は「四極子近藤効果」と呼ばれ、従来の近藤効果によるフェルミ液体状態から逸脱した挙動(非フェルミ液体状態)の発現が予言されました。この四極子近藤効果の理論モデル[参考文献2]は、主にウランを含む金属間化合物で見出された非フェルミ液体的状態を説明するために提案されました。しかし、放射性物質であり、国際的規制物資であるウランの取り扱いは難しく、またウランの価数が不確定であることや、ウランが持つ5f電子系特有の局在性・遍歴性の二面性があることから、理論的な解釈も難しいため、長年の研究にもかかわらず、四極子近藤効果の実証には至っていませんでした。特に、本現象の主役である電気四極子を直接的に捉える実験は、これまでほとんど行われてきませんでした。

図1  Pr3+(プラセオジム)イオンの局在的な電子が持つΓ3対称性の電気四極子が、等価な二つの伝導バンドの伝導電子が持つ電気四極子の成分により遮蔽される。

  

失われたパズルのピースを求めて

その間、四極子近藤効果の新たな候補物質を求めて、世界中で物質探索が行われました。近年、共同研究者の鬼丸ら(広島大学)は、4f2配位をとるPr(プラセオジム)を含む立方晶カゴ状化合物の純良単結晶の育成に成功し、この物質が四極子近藤効果の候補物質であることを提案しました。鬼丸らは、結晶内のPrの4f電子の基底状態が有するEg(Γ3)対称性の電気四極子自由度が絶対温度0.11ケルビンで凍結(四極子秩序)し、さらに0.05ケルビンで超伝導を示すことを発見しました。さらに、四極子秩序の近傍で、電気抵抗率や比熱が通常の金属とは全く異なる非フェルミ液体的挙動を示すことから、同化合物のPrを非磁性のイットリウム(元素記号: Y、原子番号39)によって希釈する系統的研究を行い、その非フェルミ液体状態が30年前に理論提案されていた四極子近藤効果によって説明できる可能性を指摘しました。Prはウラン系に比べて取り扱いに関する制約が少なく、4f電子の基底状態もはっきりしているため、「失われたパズルのピース」である、電気四極子の直接観測を実行する準備が整ったわけです。

 

図2  超音波を固体中に入射することで誘起される弾性波の概念図。弾性波のスナップショットを見ると、歪み・回転からなる格子変形が局所的に生じており、それらが作る静電場と同じ対称性を持つ電気四極子が結合する。

超音波で電子を観る?

我々は、電気四極子の応答を直接観測するために「超音波」を用いました。固体中に入射された超音波は弾性波として固体中を伝播し、結晶格子を歪ませます。局所的にその歪みは「歪み場」として捉えることができます。その歪み場は同じ対称性を持つ異方的な局所電荷分布である「電気四極子」と結合します。すなわち、弾性率を精密に測定することで、固体中の電子が持つ電気四極子自由度の応答を感受率として観測できます。本研究では広島大学で作製された試料の中から、PrイオンをYによって3.4%まで希釈したY0.966Pr0.034Ir2Zn20の純良単結晶を選び、超音波実験に用いました。このような希釈系ではPrイオンは相互作用による影響を受けることなく、単一イオンの応答を観測できます。一方、磁性を担うPrイオンは、依然として16個のZn原子が作るカゴに内包されており、4f電子が多数の配位子に囲まれている状況により伝導電子との混成効果は増強されます。


図3  カゴ状化合物PrIr2Zn20の結晶構造。4f2配位Pr(プラセオジム)イオンは、Zn(亜鉛)が作る原子のカゴに内包されている。このPrの大部分を非磁性のY(イットリウム)イオンに置換し、Prが孤立した状況を創り出した。


本研究では横波弾性率(C11−C12)/2の温度変化を精密に測定しました。この横波弾性率は、立方晶系におけるEg(Γ3)対称性を持つ電気四極子の感受率として理解できます。絶対温度2 ケルビン以下でその温度変化がキュリー的な減少(温度に反比例した軟化)を示すことから、希釈された3.4%のPrが依然としてPr 100%の母物質と同じEg(Γ3)対称性の結晶場基底状態を保持していることが証明されました。 


さらなる低温へ

一方、立方晶系が非フェルミ液体的な挙動を示す0.3ケルビン以下の「極低温」領域での四極子近藤効果を検証するには、特殊な冷凍機と強力な磁場を用いる必要がありました。そこで、ドイツ・ヘルムホルツ研究センターのドレスデン強磁場研究所との国際共同研究により、ヘリウム3-ヘリウム4希釈冷凍機と超伝導磁石、超音波位相比較法測定装置を組み合わせることで、強磁場下における0.04ケルビンの極低温での超音波観測を実現しました。弾性率の温度変化の温度軸を対数で表示しすると、弾性率が直線に乗る、すなわち+logTに比例した温度依存性を示すことがわかります。この特徴的な温度依存性が現れる温度・磁場領域は、比熱・電気抵抗率が非フェルミ液体状態を示す領域と同じであり、四極子近藤効果の理論予想[参考文献2]と一致します。以上のことから、本研究の超音波実験は、四極子近藤効果による四極子の応答を世界で初めて直接観測したものであり、四極子近藤効果を実験的に実証したものであると結論できます。[参考文献3]

 

図4  希釈系(Y1-xPrx)Ir2Zn20の横波弾性率(C11−C12)/2の温度変化と極低温領域に現れる対数的温度依存性。縦軸は物質の「硬さ」に対応し、温度を下げると(グラフの左側に行くほど)、3ケルビンまで徐々に硬くなっていた物質が、それ以下で急激に「柔らかく」なっていることがわかる。内挿図は格子振動(フォノン)の影響によるバックグラウンドを差し引いたデータ。極低温で直線に乗る(+logTに比例した温度依存性を示す)ことが判る。


今後の展開

電気四極子やさらに高次の多極子が示す新規現象は、将来の機能性デバイスや量子情報素子開発への応用が期待できます。今回実証されたのはその基礎となる現象であるため、その物理をしっかりと構築することが重要です。今後は、希釈濃度を変えた試料やその他の候補物質に対する超音波を用いた系統的な研究により、四極子近藤効果の直接的証拠をさらに追求する必要があります。特に、当初の理論で提案されていたウランを含む金属間化合物においても、立方晶系と同様に単サイトの四極子近藤効果の傍証が見つかっているため、本研究で採用した超音波測定の手法を応用して、その機構解明を目指しています。

書いた人


(左から):山根悠(広大先端)・柳澤達也(北大理)・鬼丸孝博(広大先端)


参考文献

[1] J. Kondo, Prog. Theor. Phys. 32, 37 (1964).

[2] D. L. Cox, Phys. Rev. Lett. 59, 1240 (1987).

[3] T. Yanagisawa et al. , Phys. Rev. Lett. 123, 067201 (2019).


現代物理学(月曜5限)「超音波の世界」
コンテンツダウンロード

May 07, 2018

【注意】ファイルを開く際にパスワードを求められた場合は、
講義中にアナウンスしたパスワードを入力してください。

第2回目 2018年5月7日 「超音波の世界」(担当:柳澤) Gendai_Butsuri_2018_02Ultrasound.pdf(15.7 Mb) ※一部画像を圧縮してあります。

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