What's New
![]() C01班:拡張多極子による動的応答(網塚浩) 平成27~31年度 JSPS科研費15K05882の 助成を受けています |
平成25~27年度 日本学術振興会 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣事業 「 核物質を含む化合物の強相関電子物性研究のための日米欧ネットワークの構築 」北海道大学 (R2501) |
「これからの予定」
Mar 16-19, 2020 「日本物理学会2020年次大会」 (於 名古屋大学)
Nov 27-28, 2019 「第13回科学領域横断研究会」 (於 東京大学 本郷キャンパス)
Dec 10-14, 2019 「MRM2019」 (於 横浜シンポジア)
「これまでの研究・アウトリーチ活動」
Sep 23-29, 2019 「 International Conference on Strongly Correlated Electron Systems 2019」(強相関電子系国際会議)(於 岡山コンベンションセンター)
Sep 21, 2019
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「J-Physics2019 International Conference」 (於 神戸大学)において |
Sep 18-21, 2019 「International Workshop on Conductive Multipoles and Related Phenomena: J-Physics 2019」
(於 神戸大学)
Sep 10-13, 2019 「日本物理学会2019秋季大会」 (於 岐阜大学)
Aug 5-9, 2019 「J-Physics:ものづくり学校」(於 高野山大学)
Aug 6, 2019
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米国物理学会誌(Physical Review Letters)に(Pr,Y)Ir2Zn20の四極子近藤効果に関する論文が掲載されました。詳しくはこちら。
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Jul 22-23, 2019 「J-Physics 地域研究会 - 札幌」 (於 北海道大学)
Jul 16-17, 2019 「J-Physics 地域研究会 - 大阪」 (於 大阪大学 豊中キャンパス)
Jul 9-10, 2019 「5th ISCPMS 2019」 (於 Depok, Indonesia)
Jun 28-29, 2019 「J-Physics 地域研究会 - 本郷」 (於 東京大学 本郷キャンパス)
Jun 12-13, 2019 「J-Physics 地域研究会 - 仙台」 (於 東北大学 金属材料研究所)
Jun 6-7, 2019 「J-Physics 地域研究会 - 北九州」 (於 北九州工業大学 戸畑キャンパス)
Apr 14-18, 2019 「The 49èmes Journées des Actinides 」(アクチノイド系国際会議) (於 Erice, Italy)
Mar 14-17, 2019 「日本物理学会2019年次大会」 (於 九州大学)
Feb 14, 2019 日本物理学誌(Journal of Physical Society of Japan)にEuBe13においてEuが+3価の稀有な価数状態をとることを明らかにし、さらにフォノン物性を詳しく調べた論文が掲載されました。
Jan 21-22, 2019 「新学術領域研究J-Physics: C01トピカルミーティング「拡張多極子物性研究の現状と展望」」 (於 明治大学)
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J-Material: What is this? 〜「Jマテリアル」命名の由来〜
固体内電子のスピン軌道相互作用と結晶構造に内在するパリティ対称性の破れがもたらす新しい物質機能,並びにこれを有する新物質のことを「Jマテリアル」と名付けました。この記事には続きがあります:続きを読む ...
研究室について

理学院について
2010年4月より、理学研究院の組織改変が行われ、理学院、総合化学院、生命科学院の3つに分かれました。理学院は数学専攻、物性物理学専攻、宇宙理学専攻、自然史科学専攻の4つに分かれており、当研究室は物性物理学専攻に属しております。
物性物理学専攻は、理論系と実験系に大別されます。理論系は、これまでわかってきた様々な物理現象をもとに、数式やコンピューターシミュレーションなどを用いて新たな物理法則を発見していく部門で、実験系は未知の試料の性質を様々な実験手法を通して解明していく部門です。当研究室「Jマテリアル強相関物性(旧 極低温)」は実験系の研究室で、主に、「重い電子系」と呼ばれるウラン化合物などの極低温における物性を調べています。以下で、簡単に当研究室の概要について紹介します。

Jマテリアル強相関物性研究室について
“極低温”と聞くと、何度くらいの温度を想像するでしょうか?普段の生活の中で低温といえば、まず身近なものとして冷凍庫が挙げられるでしょう。家庭用冷凍庫の中の温度はおよそ-18℃で、この温度では水や食品はもちろんカチカチに凍ってしまいます。さらに低温となると、地球上最も寒い南極の観測史上最低気温がおよそ-80℃という記録があります。しかし、-18℃も-80℃も、この研究室で扱っている温度に比べると、はるかに高温なのです。私たちは普段、最も低い温度でおよそ-273℃という極低温で実験を行っています。-273℃は、水はもちろん、空気(主に窒素や酸素)までもが固体になってしまうほどの低温で、このような極低温の下で主にウランなどを含む金属化合物の物性を調べています。物性とは、電気抵抗、比熱、磁化、硬さなどの物質固有の性質のことで、物性についての研究は今日の高度な科学技術の発展において必要不可欠なこととなっています。例えばコンピューターや携帯電話に使われている半導体は、物性理論の発展によってその性質が明らかになり、現代の情報社会を支える大きな役目を担っています。Jマテリアル強相関物性研究室では、物性を極低温で調べることによって室温では見られないような様々な現象(例えば超伝導など)について研究を進めています。

研究室の雰囲気について
当研究室の特色のひとつは、「ご飯はみんなで食べた方がおいしい」というモットー(?)です。お昼時になると、教員も学生もみんなで学食に行き、研究の進み具合や日常生活で起こった笑い話などをしながら昼食を取ります。これは他の研究室ではあまり見られないことです。その後、コーヒーブレイクタイムもあり、談笑しつつ午後からの実験に向けてやるべきことを確認し合います。このように、教員と学生との距離がとても近く、実験が上手くいかなかったときも教員と共に話し合いながら研究を進めています。
飲み会などの行事も多く、歓迎会や内定おめでとう会、院試お疲れ様会など、何かにつけて飲み会を開いています。始めは何気ない話で盛り上がっていても、最終的には物理や研究について熱く語ってしまうのはご愛嬌(笑)。院生の中には、夜遅くまで時間を忘れ実験に没頭してしまう人もいて、熱い面々が揃っています。
研究室紹介ポスター

大学1,2,3年生へ
当研究室に少しでも興味をお持ち頂けたでしょうか?研究室を決めるに当たって、研究内容はもちろんですが、どんな人たちがいるのか、どんな雰囲気か、ということもとても気になるところだと思います。少しでも興味をお持ち頂けたのなら、まずは気軽に研究室を覗きに来てみて下さい。
大学院生居室1 理学部2号館2階5号室(2-2-05室)
でんわ 011−706−3583
大学院生居室2 理学部2号館2階10号室(2−2−10室)
でんわ 011−706−3558
[TOPICS] UNi4Bのトロイダル秩序状態における新しい電流誘起磁化現象
【要旨】金属反強磁性体UNi4Bに対し電流下の磁化測定を行い、電流印加により反強磁性秩序相内で付加的に磁化が誘起される現象を世界で初めて観測した。本系の反強磁性は空間的に拡張された多極子の一つである磁気トロイダルモーメントの強的秩序とみなせるため、金属化合物におけるこの新しい電気磁気効果の発見は、先行する理論が本質的に正しいことを実験的に示している。本成果により今後は多様な反強磁性体が電気磁気効果や拡張された多極子の研究の舞台となると期待される。多極子は系の異方的な電荷・磁荷分布を記述する物理量で、電荷分布を表すスカラーポテンシャルと磁荷分布を表すベクトルポテンシャルの展開から導かれる。特にf電子系をはじめとする強いスピン軌道相互作用を有する系においては、高次の多極子が秩序を支配することもあり、系の物性を記述するうえで不可欠な概念となっている。これまで、多極子の議論はそのほとんどが局在した磁性イオンと大局的な空間反転対称性を有する系に限られており、空間反転対称性が保たれた(空間反転対称性のパリティが偶の)多極子のみを扱っていたが、近年は、空間反転対称性を有しない奇パリティの多極子の理論研究が盛んに進められている。なかでも、複数のイオンサイトを一つのクラスターとして考えることにより、これまで平凡な反強的秩序と思われていたものがクラスターの対称性に合った特定の多極子秩序とみなせる、とする理論は特に注目を集めている。これはとりもなおさず、多極子の定義を空間的に拡張することを意味する。この理論の特徴的な点の一つとして、常磁性状態で空間反転対称性を有する系においても、反強的秩序に伴いパリティが破れ、奇パリティの多極子が秩序し得ることが挙げられる。例えば、ジグザグ鎖やハニカム、ダイヤモンド構造などはパリティが偶であるが、イオン位置では局所的に空間反転対称性が破れており、それに由来する奇数次の結晶電場が存在する。この電場は系のパリティを反映して交代的な配列をなし、総和としては0となっている。しかし、ジグザグ鎖上でイオン位置に反強磁性秩序が生じると、結晶電場と磁気モーメントの結合により秩序に伴い系全体のパリティが破れ、トロイダルモーメントや磁気四極子など奇パリティ多極子が有限となり得る。これらの奇パリティの多極子が強的に秩序した場合、電流による磁化誘起現象などの非対角応答をはじめ、多様な新奇物性が生じることが理論提案されている。以上の研究は現状では理論が先行しており、実験的検証は始まったばかりである。
最近、我々の研究グループは、上記の理論を実験的に検証するため、磁気トロイダルモーメントの強的秩序が発現していると理論予想されている金属反強磁性体UNi4Bにおいて定電流下の磁化測定を行い、電流によって秩序相内で付加的に磁化が誘起される現象を初めて観測した。この成果は、日本物理学会が発行する英文誌Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)の 2018年2月号に掲載された。
UNi4BはUが僅かに歪んだ三角格子を組む結晶構造をとる。Uを囲むNiとBの配置からU位置には空間反転対称性がなく、本系は局所的に空間反転対称性が破れた系の一つである。本系の TN = 20.4 K以下の反強磁性相では、Uのうちハニカムをつくる2/3が三角格子面内に寝た渦状の磁気モーメント配列をもつことが提案されている(図1)。この渦状の磁気構造は磁気トロイダルモーメントtの定義と同じであることから、tが三角格子面に垂直な方向([0001])を向いた強トロイダル秩序とみなせる(図2)。理論では強トロイダル秩序相内で面内に電流を印加することにより、電流とtの両者に垂直な方向に磁化が誘起することが予言されている。本論文では三角格子面内[2-1-10]方向の電流印加により、面内でそれに垂直な[01-10]方向への磁化が付加的に誘起されていることを明らかにしている(図3)。著者らはこの印加電流による磁化誘起現象の異方性が理論と完全には整合しないことから、詳細な結晶・磁気構造に立ち戻った検証が必要としているが、局所的に空間反転対称性が破れた系において、磁気秩序に伴う電流による磁化誘起が観測されたという点において、本論文は理論の本質的な正しさを支持している。それはつまり、これまで平凡な反強磁性体と思われていた化合物群においても、奇パリティ多極子秩序を内包しているものがあり、電気磁気効果をはじめとする多様な物性研究の舞台となり得ることを強く示唆している。
図1 [0001]方向から見たUNi4BのUを含む層の結晶・磁気構造。結晶構造は実際には斜方晶だが、六方晶からの歪みが微小であるため六方晶の軸表記を用いている。ハニカムをなす橙の実線は磁気トロイダルモーメント(面に垂直な赤矢印)を構成する磁気モーメント(青矢印)を繋いでいる。
図2 蜂の巣構造状の渦状の磁気秩序状態(トロイダル秩序相と呼ばれる) 出典:S. Hayami, H. Kusunose, and Y. Motome, Phys. Rev. B 90, 024432 (2014). (この論文が、上述の理論予想の論文です。第1著者の速水賢は北大の理論グループの助教です。)。
図3 我々が観測した電流誘起磁化の様子(22 K以下のトロイダル秩序相において電流方向で反転する磁化が生じていることがわかる)。
原論文 Evidence of a New Current-Induced Magnetoelectric Effect in a Toroidal Magnetic Ordered State of UNi4B
Hiraku Saito, Kenta Uenishi, Naoyuki Miura, Chihiro Tabata, Hiroyuki Hidaka, Tatsuya Yanagisawa, and Hiroshi Amitsuka: J. Phys. Soc. Jpn. 87, 033702 (2018).