北海道大学 理学部
物理学科 支援室
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中学の成績はどの教科も平均40点程度。楽しみといえば、放課後のコンピューター部でMS-DOSのPCでプログラムを作ることだけでした。それが高校に入ると、先生の熱心なご指導もあって物理学に夢中に。初めてのテストが70点で返ってきたことも、大きな自信になったと記憶しています。3年になると先生から「本気で物理をやる気があるなら個別指導する」と言っていただき、その日から毎日放課後の個別授業を受けました。 一度都内の大学を受けて浪人しましたが、「次に狙うなら旧帝国大学に」とランクを上げて挑んだのが、北海道大学です。物理の先生が「北大はいいぞ」と勧めてくださったのと、実際に見学に来てみて、敷地の広さや緑の多さなど素晴らしい環境に感動しての受験でした。生まれてからずっと関東で過ごしてきたため、北大のように豊かな自然に恵まれたキャンパスで大学時代を過ごせたことは本当に貴重な経験になりました。
物性理論Ⅰ研究室へ進んだ理由は2つあります。1つは、根本幸児准教授の存在です。学部3年のとき、根本先生の統計力学の授業を初めて受講し、そのきめ細かな授業から伝わる統計力学の面白さと温厚なお人柄に惹かれて、根本先生の下で統計力学を学んでみたいと考えるようになりました。もう1つは、物性理論Ⅰ研究室が物理学の分野に限らず、生物学や経済学など様々な分野の研究を行っていることから「ここなら何か面白いことが見つかるかもしれない」と思ったからです。 研究室に配属後は、もともとコンピューターやインターネットに興味を持っていたため、WWW(World Wide Web)や友人関係、口コミなど現実世界に存在するあらゆるネットワーク構造の性質を調べる「複雑ネットワーク」を研究テーマに選びました。修士論文のテーマは、「複雑ネットワーク上における情報のカスケード現象」です。根本先生や博士課程の先輩に指導していただき、修士2年の9月に日本物理学会、12月に韓国の国際学会、翌年3月に東京の国際学会で発表することができました。東京はポスター発表でしたが、参加者投票で40人中2位に選ばれ、表彰も受けました。研究室配属から3年間の成果が認められた瞬間であり、とても嬉しかったです。
修士1年の秋、北大主催の合同説明会で弊社の会社説明を受けました。その一言目に「長く付き合える人を探している」とあり、強く印象に残りました。転職が盛んになり始めたころだったので、かえって新鮮に響いたのだと思います。それから三菱電機について調べていくうちに、医療用粒子線治療装置やトレインビジョン、新幹線の回生ブレーキなど「人の役に立つ製品」をたくさん作っているメーカーであることが分かり、第一志望に考えるようになりました。 現在所属している神戸製作所社会システム第二部を志望したのは、業務の概要説明に「ネットワーク」「通信」というキーワードがあったからです。大学での研究を通じて「人や物がつながる・お互いに情報を伝達する」ことが面白くなり、その関心を引き続き満たしていけるような現在の職場を志望しました。
社会システム第二部では、河川の氾濫防止を目的とした河川管理システムや列車の運行管理を行う交通情報システムなど、公共情報システムを製作しています。私自身は、こうした"縁の下の力持ち"のようなシステムの中で使用するネットワーク機器の開発を行っています。 近年のWebや情報機器の発達により、目の前の問題だけに対処する方法なら、誰でも簡単に得られるようになりました。一方、開発業務で直面する問題の解決には、表面上のレベルではなく、より深い根本に迫る「問題の本当の発生原因」を知ることが必要不可欠です。これはWebを検索しても分かりません。 この「問題の本当の発生原因」を明らかにするには、論理的に物を考える力がなくてはならず、私はこの力を北大の研究生活の中で鍛えることができました。物理学には小手先の「分かった」は通用しません。現実世界で起きる現象に「なぜ?」「どうして?」を徹底的に繰り返し、その論理を数学の言葉で記述する。この繰り返しにより身についた論理的に物を考える力が、今の仕事でも最大限に生かされています。 物理学を学ぶ、ということは一見実生活に何の関係もなく、役に立たない行為に思われるかもしれません。しかし、Webで簡単に情報を取得できる今の時代だからこそ、論理的に物を考える力が非常に重要なスキルであり、これを身につけるためには、自然科学の中でもとりわけ物理学が適していると、今、社会の中に身を置きながら一層強く実感しています。