研究日誌
2010-Oct 青き光
秋も深まってまいりました。私は紅葉を楽しむために美瑛町まで車を走らせ、「青い池」と呼ばれる景勝地に行って写真(真中)を撮ってきました。 綺麗に撮れたのでホームページのトップのスライドを更新しました。
そこは近くの温泉が流れ込む砂防ダムで、紅葉を水面に映す水面はエメラルドグリーンの神秘的な輝きを放っていました。
右下の写真は米国フロリダのタラハシーにあるサイプレスの泉。泉の底は白い砂で覆われているため太陽光(白色光)を良く反射し、水分子による低波長スペクトルの散乱によって水が青く見えます。
左下の写真はイタリアの青い洞窟。これも原理は同じ。洞窟の底は白い砂で覆われています。南の島の珊瑚礁の海も同じ色をしていますね。
ところが今回の美瑛の池の底は、焦げ茶色の腐葉土です。では、美瑛の池はどうして青く見えるのでしょうか?
答えは、水が「微妙に白濁」しているからです。温泉のアルミニウムの成分が川の水と出会うとコロイド状の化合物が形成され、
それが絶妙な加減で白色光を散乱し、先述の湖底の砂の役割を果たしているのでしょう。
これは牛乳や霧(雲)が白く見える原因の「ミー散乱」という現象に依ります。
電磁気学の言葉を使うと、美瑛の青い池が青いのは「レイリー散乱」と「ミー散乱」が複合的に現れたことが原因と言えます。
可視光の波長(380 nm 〜750 nm)に対して大きい散乱体(水溶液中の大きめのコロイド分子)によって白色光が反射され、
可視光の波長に対して小さい散乱体(水分子と小さめのコロイド分子)によって短い波長(〜470 nm付近)を持つ青色以外のスペクトルが吸収されるため、
我々の目には青色の光だけが届きます。It's so COOL!
ちなみに右上の写真は原子炉の炉心で観られるチェレンコフ光といわれる青い光。
高いエネルギーを持った荷電粒子が水の中を走ると衝突してエネルギーを受け取った水分子が励起されて青き光を放ちます。こちらはどちらかというとToo HOTです。
左上は美しい蝶。こちらは羽の表面の微細構造の大きさが青色以外の光のスペクトルを吸収する大きさに対応しています。
可視光では黒く見える羽の領域も紫外線(昆虫の目)で観てみればもしかしたら鮮やかな虹色をしているのかもしれません。
in English, coming soon..