Ultrasonic Team (T. Yanagisawa, Hokkaido Univ,)    
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Gamma 3-type Lattice Instability
and the Hidden Order of URu2Si2

Nov 30, 2012

URu2Si2 は体心正方晶 ThCr2Si2 型(空間群 No.139, I4/mmm)の結晶構造をとり、 To = 17.5 Kにおいて「隠れた秩序(Hidden Order)」と呼ばれる、秩序変数・秩序波数が共に未解明の相転移を示す重い電子系化合物です[1]。また、本系はさらにTc = 1.4 Kで異方的超伝導転移を示すことも知られています。隠れた秩序において、零磁場μSRや29Si-NMR実験では To以下で顕著な内部磁場が観測されないことから、内場が零か、もしくはあっても極微少であることがわかっています[2]。そのため、これまで数多くの隠れた秩序変数の候補が提案されていますが、その中の有力な候補として非磁性の電気多極子が挙げられます[3]。
一方、URu2Si2 の隠れた秩序相内(T ~ 1.5 K)でc軸に磁場を印加した場合、35 Tから3段のメタ磁性転移が起こり、c軸磁化率が増大することがこれまでにわかっています[4]。本研究ではドレスデン強磁場センターにあるパルスマグネットを用いて最大磁場68.7 Tのパルス磁場下で超音波測定を行い、強磁場下における弾性応答の観点からURu2Si2 の低温電子状態を調べました。一般に、5f 電子状態を局在的に扱う場合、弾性応答は局在5f電子が持つ電気四極子の応答として理解できます。一方、5f 電子を遍歴的に扱う場合、弾性応答は電子格子相互作用を通じてバンドの状態を反映します。このように超音波によって試料中に誘起される歪み場は磁場と直交するため、磁場中での超音波測定は上記の電子状態を分光学的に調べる上で強力な実験手法と言えます。
T = 1.5 Kにおいてc軸方向にパルス磁場をかけて弾性定数(C11C12)/2を測定した結果、メタ磁性転移近傍で(C11C12)/2は階段状の異常を示しつつ、50 Tまで約0. 7 %増大しました。その変化量は零磁場下の温度変化において120 K付近から最低温度までに生じる緩やかな弾性定数の減少(ソフト化)の大きさとほぼ一致するように見えます。一方、c軸磁化率も (C11C12)/2と良く似た磁場・温度依存性を示すことから、それらの起源が共通の根を持っている可能性が示唆されます。c軸磁化率と(C11C12)/2の温度依存性において低温で共通して生じる減少傾向は、5f電子の混成効果と結晶場効果の複合によって説明できると考えられますが、遍歴性と局在性の二重性を持つ5f電子系を記述するための基本描像が未だ定まっていないため、その判別は難しいところです。いずれにせよ、 (C11C12)/2モードは対称性を低下させる斜方晶歪み(Γ3: 基底関数x2y2)に対応することから、URu2Si2ではΓ3対称性の格子不安定性を伴う電子状態が低温で形成されており、c軸磁場で生じるメタ磁性転移によって隠れた秩序が壊れるのと同時にその電子状態から、比較的「軽い」電子状態で尚かつ格子不安定性が抑制された状態に回復していることが、本研究結果より推測されます。

[1] T. T. M. Palstra et al., Phys. Rev. Lett. 55, 2727 (1985); M. B. Maple et al., Phys. Rev. Lett. 56, 185 (1986); W. Schlabitz et al., Z. Phys. B 62, 171 (1986).
[2] S. Takagi et al., J. Phys. Soc. Jpn. 76, 033708 (2007).
[3] H. Kusunose et al., J. Phys. Soc. Jpn. 80, 084702 (2011).
[4] M. Jaime et al., Phys. Rev. Lett. 89, 287201 (2002).

本研究についてより詳しい内容は下記の論文をご覧下さい。
T. Yanagisawa et al., J. Phys. Soc. Jpn. 82 (2013) 013601.

(also available on cond-mat/1211.7185)

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