Introduction
研究室の概要
科学基礎論研究室では、伝統的に物理哲学の研究が中心に行われてきましたが、現在の指導教員(松王)の下で、より広い視点での科学哲学研究が行える体勢づくりを進めています。
科学哲学とはもともと、「科学的知識とは何か」、また「科学的知識をいかに得ることができるか」を、一般的に、あるいは個別科学に即して、実在、経験、確率などの普遍的トピックに照らしながら問う学問だと言えます。こうした研究はそれ自体でたいへん興味深く、その興味が私たちの研究室での研究を根本において支えていることは間違いありませんが、私たちの研究が目指す先にあるものは、必ずしも伝統的な科学哲学の範疇には収まりません。私たちは科学哲学研究の成果を単に哲学の一分野の成果に留めずに、できるだけこれを実践的な問題と関係づけて論じたいと考えています。» <続き>
先輩の声 NEW
科学基礎論研究室 平成20年修士課程修了の井上拓己氏、平成28年博士後期課程修了の新納美美氏による「先輩の声」 。
研究室の主な活動
海外研究者との共同研究・教育
R. Frigg教授(LSE)を招き、科学哲学シンポジウム「科学とモデル」、サイエンスカフェ「想像力をめぐる対話」を開催(2023年2月22日、24日)
科学モデルの研究で著名な科学哲学者ローマン・フリッグ教授(ロンドンスクールオブエコノミクス&ポリティクス)を招き、科学モデルとは何かをめぐる、多角的な視座による国際シンポジウム「科学とモデル」を北海道大学学術交流会館で開催(2月22日)。シンポジウムには、ゲストスピーカーとして、若手ベイジアンのK. McAlinn氏(テンプル大学)もお招きしました。また、フリッグ教授とアーティストの平川紀道さんとの対談「アートと科学哲学からの想像力をめぐる対話」を札幌市図書・情報館で開催(2月24日)。シンポジウムでのフリッグ教授の講演は、北海道大学OCWでこちら で公開されています。カフェに関する情報はこちら 。 また、フリッグ教授には、シンポジウム講演内容に基づく論文をLinkage第3号に寄稿していただきました。論文は、こちら からアクセスできます。
フリッグ教授には通常のゼミにも参加していただき、休日には手稲で一緒にスキーも楽しみました。※本科学哲学シンポジウム、およびサイエンスカフェは、科研費研究(基盤B:20H01736)「統計学的観点を加味した科学哲学による「科学的推論」教育プログラムの構築」の支援により実施しました。またシンポジウムは北海道大学オープンエデュケーションセンターオープン教育研究部門のみなさんの、またカフェは同センターCoSTEP部門のみなさんの多大なご尽力により実現しました。みなさんのご協力に感謝します(OCW公開に当たっては基礎論研究室高橋君が、また論文公開に当たっては基礎論研究室尾崎君が、それぞれ完成までフリッグ教授と何度もやりとりしてくれました。二人の協力にも感謝します)。
フリッグ先生とのゼミ(2月27日)。
A. Hajek教授(オーストラリア国立大学)との「確率カフェ」開催(2017年9月12日)
条件付き確率の哲学で著名なアラン・ハイエク教授を招き、確率の考え方や、確率と社会の関係についてのカフェを北大総合博物館「知の交差点」で開催(科学基礎論研究室・CoSTEP・文学研究科哲学講座主催、応用倫理研究教育センター・総合博物館後援、ミュージアムカフェぽらす協力)。詳しい報告はこちら 。
アラン・ハイエク先生と「知の交差点」にて。.
B. Glymour教授との特別集中講義実施(2011年3月)
ブルース・グリマー教授の協力で、基礎論ゼミ生を対象にした特別集中講義を、カンザス州立大学で実現しました。詳しくは» こちら をご覧ください。
Special lecture in KSU, March 7-8 2011.
ゼミ (週一回。2023年度前期は、水曜午後4時〜6時)
輪読と研究発表。比較的最近の輪読素材は、たとえば以下のもの。
Frigg, R. and Nguyen, J., Modelling Nature , 2020, Springer.
Weisberg, M., Simulation and Similarity , 2013, Oxford UP.
戸田山和久, 『科学的実在論を擁護する』, 名古屋大学出版会, 2015.
Taper, M. L. and Lele, S. R. (ed.), The Nature of Scientific Evidence , 2004, The University of Chicago Press.
Illari, P. M., Russo, F., and Williamson, J. (ed.) Causality in the Sciences , 2011, Oxford UP.
Sarkar, S., Biodiversity and Environmental Philosophy , 2005, Cambridge UP.
Slowman, S., Causal Models: How People Think About the World and Its Alternatives , 2005, Oxford UP.
Tversky, A. & Kahneman, D., 'Extensional versus intuitive reasoning: The conjunction fallacy in probabiity judgment.'
Gigerenzer, G., 'On narrow and vague heuristics: a reply to Kahneman and Tversky.'
Shrader-Frechette, K. S., 'Comparativist rationality and epidemio- logical epistemology: theory choice in cases of nuclear-weapons risk.'
Mayo, D. G., 'Duhem's problem, the bayesian way, and error statistics, or "what's belief got to do with it?"'
Laudan, L., 'How about bust? Factoring explanatory power back into theory evaluation.'
Broome, J., 'The ethics of climate change.'
Shrader-Frechette, K. S., 'Technology, the environment, and inter- generational equity.'
The Philosophy of Science: An Encyclopediaから、'Theories'の章.
ゼミ合宿
夏期に合宿を行い、集中的に一つの題材を勉強したり、各個人の研究について時間をかけて議論します。
2009年度は9月11日〜13日に、定山渓温泉に宿泊してv. Fraassenの勉強会ならびに個人発表(+卓球大会)で大いに盛り上がりました(旧・Seminar Memo に井上の報告)。
2009年度 合宿の様子(フラーセンには手こずりました!みっちり勉強した後の1杯は格別)
2013年度は9月21日〜22日に、再び定山渓温泉にて、一ノ瀬正樹『放射能問題に立ち向かう哲学』(筑摩選書)を題材とした討論、および個人発表(+卓球大会、リベンジ!)を行いました [一ノ瀬氏の本に関する合宿討論の一部をまとめました。第1, 2章の討論内容(新納による総括的議論)はこちら )。第9章の討論内容(神田による当日議論のまとめ・松王加筆)はこちら )]。
2013年度 合宿の様子(工学部の行松教授も参加して行われた勉強会。恒例の卓球大会の優勝者は?)
2014年度は9月6日〜7日に、はじめて支笏湖ユースホステルにて合宿を行いました。前半は、前期にゼミで読んだSahotra Sarkarの生物多様性哲学に関するまとめ(Biodiversity and Environmental Philosophy ch4後半のまとめ(本間のセミナーメモ参照) と、多様性保全と規範に関する総括的な論文 'Norms and the conservation of biodiversity'(2008) の輪読)、後半は、11月16日に日本科学哲学会で発表予定のワークショップ準備(共通素材、Richard Scheinesの'Causation, Statistics, and the Law'(2007) 輪読、interventionismに関する松王の講義、各発表者の準備状況報告)、加えて博士論文提出予定の尾崎、小野田の個人発表、草野の修士研究中間報告を行いました。 今までにない盛りだくさんな合宿でしたが、空気もご飯も最高においしく、源泉100%の温泉は気持ちよく、たいへん充実した時間を過ごすことができました!(今年から、卓球大会に加え、「詰め将棋プロ講座」も開講。)
2014年度 合宿の様子(ミニ体育館のような会議室を貸切で使わせてもらいました。昼は勉強、夜は?)
2015年度合宿は、9月14日〜15日に総勢10名で、定山渓温泉(研修保養施設 錦渓)にて行いました。前半は、『精神医学の科学哲学』(レイチェル・クーバー著、伊勢田哲治・村井俊哉監訳、名古屋大学出版会)の輪読、後半は個人発表を中心に行いました。 『精神医学の科学哲学』は、精神疾患をどう捉えるかをめぐって、自然種概念、心身問題(二元論や還元主義)、パラダイムのありよう、RCT(ランダム化試験)問題、科学における価値判断問題など、科学哲学的視点で問題を整理し、答えを模索した本です。クーパー自身の答えはやや曖昧で捉えにくいものの、精神医学の現状(クーパーは「多重パラダイム」と見て、DSM=精神疾患の診断と統計マニュアル=が「接触言語」の役割を果たしているとする)や、科学哲学のコアな議論と精神医学との接点を知る上でたいへん興味深い本でした。特に後半、医学プロセスにおける価値判断問題に関して、医学者がこれに自覚的であることの難しさを論じた部分、および価値判断問題と研究不正問題との接点を論じた部分は、H. ダグラスらの価値問題論者とは異なる新鮮な切り口で、たいへん示唆に富むものでした。看護学がバックグラウンドの新納氏、また医師のK氏(特別参加)のコメントが助けとなり、問題のさらに深い部分に触れられたように思います(もう一人、農学院の大久保氏も特別参加して議論を盛り上げてくれました)。
2015年度 合宿の様子1(研修施設なので立派な会議室が使えました。いい雰囲気の中、議論白熱。)
後半は個人研究発表。博士論文進捗に関して、D3の新納、尾崎、小野田の各氏が発表。M1の高橋氏もカルナップ哲学の評価について果敢に発表。D1草野氏がtechnological singularity(技術的特異点)問題をめぐるDavid Chalmersの議論(The Character of Consciousness, 2010. Oxford UP)とその後の論争をサーベイして発表。いずれの発表も議論が白熱しました[追記 :前期のゼミ輪読素材『科学的実在論を擁護する』(戸田山和久著、名古屋大学出版会、2015年)に対するコメントを本間氏、大久保氏が自らの視点で執筆。合宿では十分議論できませんでしたが、もともと発信目的だったので両コメントを»こちら で公開します(2016.1.22.尾崎氏のコメントを追加)]。 もう一つ白熱したのは、言うまでもなく恒例の○○ 大会。ボールが自然に変化するという難コンディションの中、栄冠を手にしたのは?初日の夜は、草野氏出演の秘蔵映画鑑賞でも盛り上がりました。 合宿初日、H氏が珍しく遅刻して一人昼過ぎに到着という波乱の幕開けでしたが、一流シェフによる本格的な料理に、気持ちのよい温泉、おいしい空気。今年も素晴らしい環境の中、密度の濃い二日間が過ごせました。
2015年度 合宿の様子2(食事がまた格別!しかもおかわり自由で何ともありがたや〜。卓球大会では連覇のかかるO氏だったが、果たして・・・)
2016年度合宿は、網谷先生(東農大)の白熱した集中講義(生物学の哲学)が終わるやいなや定山渓ホテルに直行し、9月2日〜3日の二日間で行いました。今年の合宿はは科研費研究(基盤B 16H03050)の勉強会を兼ね[島谷教員(統数研)、森元教員(北海道医療大)、川本教員(北大)が参加]、また科哲に関心のある学部生3名[北大の高井君、越後谷君、医療大の平野君]も参加してくれたので、参加者総勢18名というたいへん賑やかな合宿となりました。医師のK氏、農学院の大久保氏も昨年に続いての参加です。 今回の合宿の輪読素材は、島谷氏を通して交流があり、科研費研究でも協力してもらう予定のM. Taper(モンタナ州立大学、生態学)らが出した最新著書、Belief, Evidence, and Uncertainty: Problems of Epistemic Inference , Springer, 2016です。Taperが2004年にE. Soberらと共著で出したThe Nature of Scientific Evidence , Chicago UP.が科学的話題と哲学的話題がともに取り上げられた画期的な本だっただけに(ただし融合はしていない)、今回の著書へも同様の期待が当初ありましたが、今回は残念ながら(と言うべきか?)ほぼ確率・統計に関する「哲学的」議論に関する本でした。
2016年度 合宿の様子1(以前使った円形会議室ではなく、「宴会場」貸切。なんせ18名ですから。)
構成は三部構成。第一部でこの本の基本的主張である「確証と証拠の区別」が論じられます。確証(信念に関わること)は本来ベイズ的事後確率で判断すべきで、証拠は尤度で判断すべきだとする主張。この二つの判断の混同が様々な議論の混乱や問題を招いているとして、第二部ではC. Glymourのブートストラップ法やD. MayoのPiecemeal Testingなどの哲学的議論が取り上げられ、その中でのこの「混同」に由来すると思われる難点が論じられ、第三部ではさらに、グルー・パラドクスなど哲学的パラドクスも同じ混同に基づくとして、その「解消」が図られます。 この種の議論にある程度慣れている院生たちも、担当箇所の準備に相当手を焼く内容で(合宿前日は全員徹夜?)、また二日間の議論の中で18名の知恵をもってしても解釈に四苦八苦する箇所が少なからずあり、過去の合宿中最も疲労困憊した合宿だったかもしれません。
2016年度 合宿の様子2
しかしその分成果は十分ありました。著者らが一部の議論で、尤度の値を「ミスリーディングな証拠の確率」として単独で評価している点など、尤度の取り扱いに疑問のある箇所があったり、TaperらのAICに関する議論がAppendixにしかなく本論との関連が薄いなどの不満点もありますが、⑴ 確率統計に関する主要な哲学的議論を一貫した視点で整理し直してくれていること、⑵ 対象となる哲学的議論を改めて学び直せたこと(生態学の方法論を模索する島谷氏が、定数の決定を中心とするグリマーの哲学的ブートストラップ法に興味を持つ、というようなこともありました)、また、⑶ 本書では科学との接点は示唆程度だが、哲学から科学への接続を考えるときの一つのモデルを与えていること、などが有益だったと思われる点です。 学部生たちもたいへん刺激になった、と笑顔で感想を言ってくれました(笑顔のわけは、恒例の○○ 大会で学部生の成績がよかったから?)。おいしいビュッフェと気持ちいい温泉。そして18名の真剣な知のぶつかり合い。今年もやってよかったと思える合宿でした。
今回は俺がもらった!(E君)
2016年度 合宿の様子3(ビュッフェは3年前と変わらない味と品数で大満足!O氏が抱く○○ 大会3連覇の野望。果たして優勝の行方は?)
2022年10月9日〜10日の二日間、4年ぶり(2018年以来)となる夏合宿を行いました(2019年はプラハでのCLMPST参加のため合宿はお休み。その後、コロナの影響で二年間は実施せず)。 場所は、定山渓の研修保養施設「倶楽部錦渓」。ぜひともまた行きたかった宿です。食事の素晴らしさ、温泉の気持ちよさは2015年に利用したときと変わらず(宿泊費もほとんど変わりません)、今回二回目の参加者も、はじめての参加者も大満足でした。今回の合宿も、これまで同様、科研費(20H01736「統計学的観点を加味した科学哲学による「科学的推論」教育プログラムの構築」基盤研究(B))の勉強会とゼミ合宿の同時開催の形で実施しました。参加者は、科研費メンバー4名(島谷、森元、大久保各氏と松王)に加えて、科学基礎論研究室メンバー3名(尾崎君、高橋君、細谷君)、ふだんゼミに参加している学部生3名(生物科学科の原田君、地球惑星科学科の森北君、医学部の近藤君)の計10名でした。 合宿のテーマは、「Friggのモデル論を読み込む」です。実は、2023年2月に、科研費でRoman Frigg氏(ロンドンスクールオブエコノミクス)を招聘し、モデル論シンポジウムを開催することが決まっており、今回の合宿はその準備を兼ねたものです。
※Frigg氏のシンポジウムについては、またこのサイトでお知らせします。 すでに基礎論ゼミでは前期にFrigg氏のModelling Nature (2020) を読み込み、彼のDEKI説(科学モデルを小説などのフィクションと同列に扱うフィクション説をさらに改良、発展させた考え方)についてかなり理解を深めていました。しかし、新たにModels and Theories (2023) が出版されて、モデルについて、科学哲学の歴史的議論(Semantic Theory)との関係を含むさらに掘り下げた議論がなされているので、これを合宿の素材とすることにしました。
合宿で取り上げたのは、同書の9, 13, 14章(事前にFrigg氏に相談の上決定)。構造説などの従来の表象説に対してDEKI説にどのような特徴、長所があるのか、モデルと理論はどのような関係にあるのか、モデルの定義(ontological, functional)としてどのようなものが適切か、について述べられた章です。特にDEKI説について、Modelling Nature では十分に扱えていなかった数理モデル(あるいはモデル記述としての数式)の位置づけについて、Frigg氏の見解がより明確になっており(「想像される虚構物についての記述の一つ」という位置づけ)、DEKI説と実際の科学モデルとの関係がたいへん捉えやすくなりました。 もっとも、まだDEKI説で科学モデルが包括的に捉えられるかどうかは議論が必要です。合宿でも数理モデルがすべてこの枠組みで捉えられるかどうか、白熱した議論が行われました。DEKI説に異を唱えるTarja Knuuttilaの「人工物説」の方が馴染むケースもあると思われます。しかし、これから何に注目して議論すればよいかについて、かなりよい見通しが得られたことは大きな収穫です。 二日目には、正にこのモデル論を修士論文のテーマとするM2細谷君が研究発表し、議論しました。細谷君は「モデルのダイナミクス」に注目していま研究を進めているところですが、Frigg氏が来日する頃には、面白い論文ができていることと思います。
2022年度 合宿の様子(7年ぶりの錦渓。今回は立派な中会議室を借りて、二日間の熱い議論。疲れもご馳走と温泉で癒やされました。はじめはプロジェクターがうまく起動せず、焦りましたが・・・)
2023年度合宿を、10/8-9の二日間、新苫小牧プリンスホテルで実施しました。7月末にCLMPST(ブエノスアイレス)でシンポジウムを実施した関係で、合宿準備が例年より遅れ、宿泊先を決めるのにやや焦りましたが、無事苫小牧で実施することができました。ホテル会議室の大きさは、小規模合宿で使うのにちょうどよい大きさで、二日間じっくり議論することができました(会議室の名前は、「大安吉日」!)。参加者は、科研費メンバー(森元さん、大久保さん)、研究室のふだんのゼミメンバー(尾崎、髙橋、佐藤K、佐藤S、平田、近藤、森北の各氏)と松王の10名。会議の充実に加え、夜の地元居酒屋での宴会、温泉、二段重和食の朝食など、合宿の醍醐味も十分味わえました(残念ながら卓球大会はできませんでしたが)。
合宿の勉強素材は、前期から読み進めている論集Scientific Understanding and Representation (2023) のPart IIです。この第二部では、第一部でのunderstandingとknowledgeに関する議論を下敷きにしつつ、実在論陣営の論者が、それぞれの異なる実在論的主張をめぐって論戦を展開します。中心になるのはC. PincockとA. Potochnikの二人。ピンコックがcontextualな実在論を批判し、independence conditionが実在論に不可欠とするのに対し、ポトチェニックは科学者の目的などに応じてcontextualに決まるcausal pattern こそが科学的実践に即した実在論だとして、これまでの「真理」に根ざした実在論を批判します。反実在論との関係ではなく、実在論内部の主張のぶつかりあいについてじっくり読むことができ、実在論論争に関してまた一つ、新たな視点を得ることができました。特に、これまでかなりモヤモヤ感のあった、Potochnikのcausal patternについて、本論で彼女自身がcausal structureとの「違い」と両者の「つながり」について詳しく論じており、彼女の目指すところがかなり明確になったことが大きな収穫です。彼女の立場をめぐっては、参加者の間でかなり激論となりましたが(佐藤S氏が、激論のよいきっかけを作ってくれました)。後期ゼミは、この勢いでよいスタートを切れそうです。
2023年度 「大安吉日」というおめでたい名前の部屋で、名前に似つかわしくない激論が繰り広げられる。最後はみんな笑顔で記念撮影。
自主ゼミ
研究室の正式なゼミとは別に、学生だけで運営しているゼミがあります。現在、カルナップ(およびライヘンバッハ)の読書会、および時空論の読書会が行われています(自主ゼミのメモはこちら 。2015年4月から、時空論ゼミの記録も併せて掲載しています。)
学生の進路
当研究室には、研究者を志す学生もいれば、学んだことを企業や学校、公共機関で活かしたいという学生もいます。就職希望者には、科学哲学研究に加え、講座の博物館演習や科学教育演習、また理学院CoSTEPの実習等で学び、より実践的な科学技術コミュニケーションのスキルを磨く路が開かれています。
2022年度:講談社
2020年度:私立高校教員(理科)
2018年度:アクセンチュア、厚労省調査専門員
2017年度:横浜国立大学リスク共生社会創造センター非常勤講師
2016年度:博士課程進学、標津町地域おこし協力隊
2014年度:博士課程進学
2013年度:博士課程進学
2009年度:住友電工情報システム、大阪府公立学校教員、愛媛県総合科学博物館(博士課程途中で採用)
2008年度:NTT東日本、中部電力
2007年度:博士課程進学(他専攻含む)
学生の受賞