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トピックス 2023/05/22
理学研究院物理学部門の速水先生の論文が「Journal of the Physical Society of Japan」誌の Most Cited Articles in 2022 に選ばれました。

北海道大学大学院理学研究院物理学部門の速水賢准教授、九州工業大学大学院工学研究院、広島大学大学院先進理工系科学研究科、高輝度光科学研究センター、茨城大学大学院理工学研究科量子線科学専攻からなるグループが執筆した論文が「Journal of the Physical Society of Japan」誌の Most Cited Articles in 2022 に選ばれました。


この論文は、イリジウム酸化物Ca5Ir3O12 が示す温度105 K の相転移の秩序変数を報告したものです。相転移の秩序変数を明らかにすることは固体物理学における主要なテーマの1 つです。本論文の対象物質であるCa5Ir3O12 では、温105 K において比熱に大きな異常が見られていたため、相転移が起きていることは理解されていましたが、一方、種々の実験が行われたにも関わらず,その秩序変数の特定には至っていませんでした。研究グループは、温度105 K 相転移の秩序変数を解明するために、純良単結晶を用い非弾性X 線散乱(IXS)の実験を行い低エネルギーのIXS スペクトルの詳細を調べました。その結果105 K 以下で波数q = (1/3, 1/3, 1/3)で特徴づけられる超格子反射が出現することを発見しました。さらに、得られた超格子反射強度の振る舞いを調べることで、その秩序変数が電気トロイダル多極子モーメントを伴う新しいタイプの秩序状態(電気トロイダル多極子秩序)であることを明らかにしました。今回の観測された電気トロイダル多極子秩序が示す物性については未だ謎の点が多く残されているため、同物質に対する今後の研究の進展が期待されます。

Ca5I3O12.png