研究日誌
2011-11/14-18 Dresden, Germany
Nov 21, 2011
ドレスデンはドイツとチェコの国境近く(プラハまで電車2時間)のところに位置する旧東ドイツの大都市の一つです。強王アウグストⅡ世が栄華を極めた中世のザクセン王国の首都だったのですが、第二次大戦の英米軍による空襲では焼け野原になってしまいました。現在はいくつかの主要な建築物が復旧されて、当時の街並を取り戻しつつあるそうです。
郊外にはKGB時代のプーチンさんが勤務していたと噂される秘密警察のアジトや、森鴎外さんが足繁く通ったといわれるビアホールなどがあります。今回我々が訪れたのは、中心街からバスで30分ほどのところのRossendorfという森の中にひっそりとたたずむヘルムホルツ・ゼントラム研究所です。(その前身はナチスの秘密研究所だったに違いありません!)
その研究所の一角に「強磁場研究所」があり、そこには2.88メガジュールというとてつもなく膨大な静電エネルギーを蓄えることができるキャパシタンスバンクが、ななんと、18機も並んでおり、その容量はヨーロッパ最大とのこと。今回はそのうち3機を繋いで、じわじわと充電し、2万2千ボルトに達した静電エネルギーを、液体窒素で冷やした銅製のコイルに一気に入力しました。それにより1.5 Kにおいて直径8 mmの空間に62テスラという強磁場を0.15秒程度の幅を持つパルスとして生み出し、その極限環境に於ける超音波測定に成功しました。
パルス入射時の衝撃はすさまじく、マグネットが設置された部屋に置いた扇風機のモータが吸い寄せられて冷凍機にぶつかるほどです。
その様子を撮影したビデオはこちら (Quick Time mov 1.8 Mb)
(※ HD quarity (78 Mb)はこちら)
今回はM1の門別君と共に、このパルス磁場と超音波測定を組み合わせて、SmOs4Sb12の弾性定数を62 Tまで測定することを試みましたが、初めての挑戦でしたので、予想外に苦戦しました。しかしながら、(苦難の末、)最終日にようやく満足できるデータが得られ、美味しいドレスデンの地ビールを楽しむことができました。