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[TOPICS] EuIn2P2における磁場中比熱測定
図1 EuIn2P2の磁場中電気抵抗
EuIn2P2は六方晶 (空間群:P6(3)/mmc)の結晶構造を持ち,Tc = 24 Kにおいてキャントした強磁性秩序を起こす物質である.この物質の電気伝導や磁化測定は磁場効果を含めて研究されており,Tc近傍で巨大磁気抵抗を示すことが知られている.しかし,基本物性の一つである比熱測定は行われていなかった.そこで,EuIn2P2の熱特性を調べるために,試料作製および強磁場下における比熱測定を行った.その結果,強磁性転移は二次相転移であることやEuイオンのもつf電子は低温まで局在していることなどが熱特性の観点から確かめられた.磁場効果も強磁性体において期待されるものであり,強磁性転移が起きているという磁気測定の結果と一致した.
位相比較法(ヘテロダイン検波)を用いた弾性定数測定
単結晶試料に圧電素子を貼り付け、電気パルス信号を超音波パルス信号に変換して音の伝わる速さを測定しています。原理は簡単ですが、高精度の測定を実現するため随所にさまざまなアイデアとノウハウが駆使されています。 超音波の発生・検出を行う圧電素子にはニオブ酸リチウム(LiNbO3)の単結晶をカットして用いています。水晶に比べて変換効率が高いためS/N比が向上し、極低温においても発熱を抑制できます。また、縦波に36°Yカット、横波にXカットを用いることで超音波モードを分離することができます。振動子の共振周波数は厚さに反比例するので、振動子を薄く研磨すればするほど高周波が得られます。1 GHz以上(圧電素子の厚さにして数μm以下)の高周波が必要な場合は、ZnO薄膜振動子を試料表面に直接スパッタリングすることで得られます。
図 超音波位相比較法のブロックダイアグラム
我々は音速を高精度で測定するため、試料内を伝播する音速の変化量を周波数の変化量に置き換えて観測する位相比較法を用いています。交流電気信号の虚数成分である位相信号の時間微分を零に保つよう信号発生器に負帰還をかける零検出回路の手法で10-6以上の高分解能を得ており、様々な物質の電子物性を研究しています。 また位相比較法の原理に加えて、高周波回路設計にもさまざまな工夫が施されています。回路に用いられている線路は冷凍機の最低温部まで完全にインピーダンス整合された同軸線(管)で結線されており、高利得、高S/N比を得ています。また、複数の二波混合器と局部発信器を駆使した周波数変換と高利得のIFアンプを用いる「ヘテロダイン検波法」により1 GHz超の高い周波数でも原理的に測定可能です。高周波化により分解能が増し、指向性も高くなるため小さな単結晶も高精度で測定することができます。近年の携帯電話の普及等めざましいテクノロジーの進化に伴い、比較的安価に上記の高周波デバイスが手に入る時代になりました。それらを上手に組み合わせ、時に自作し、世界最高のデータを出せるかどうかは実験物理学者の腕の見せ所でしょう。