Present Member
Jマテリアル強相関物性 研究室 2024年度(令和6年度)メンバー |
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教授 Professor 専門: 低温磁性 自分を元素に例えると:94 Pu (プルトニウム) |
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准教授 Associate Professor 専門:誘電体物理、相転移現象 自分を元素に例えると: () |
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教授 Professor(Since 2022) 専門:超音波電子物性 自分を元素に例えると:12 Mg (マグネシウム) |
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助教 Assistant Professor (since 2007) 専門:高圧下物性測定 自分を元素に例えると:1 H2 (水素) |
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博士3年 D3 日本学術振興会特別研究員(DC2) 研究内容:非クラマース系化合物(Y,Pr)Ir2Zn20及び(La,Pr)Ti2Al20の弾性応答における元素希釈効果 -Elemental dilution effect of the elastic response on the non-Kramers systems (Y,Pr)Ir2Zn20 and (La,Pr)Ti2Al20- 自分を元素に例えると:25 Mn(マンガン) |
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修士2年 M2 自分を元素に例えると:25Mn(マンガン) |
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修士2年 M2 研究内容:f電子系磁性体における熱膨張測定と磁気圧電効果の検証 -Thermal expansion measurement and verification of magneto-piezoelectric effect in f-electron magnetic materials- 自分を元素に例えると:58Ce(セリウム) |
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修士2年 M2 研究内容:アシンメトリ量子系における超音波を用いた交差相関現象の研究 -Study of cross-correlation phenomena using ultrasound in asymmetric quantum systems- 自分を元素に例えると:92U(ウラン) |
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修士1年 M1 研究内容:5f電子パリティ混成効果を具現する典型物質の探索 - Search for prototype materials exhibiting parity mixing effects of 5f electrons - 自分を元素に例えると:19K (カリウム) |
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修士1年 M1 研究内容:金属の極性-非極性構造相転移を示すLiReO3の超音波測定 - Ultrasonic measurements of the polar-nonpolar structural phase transition in the matallic compound LiReO3 - 自分を元素に例えると:39Y (イットリウム) |
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修士1年 M1 研究内容:URu2Si2の隠れた秩序状態における磁気トルク測定 - Magnetic torque measurements in the hidden order state of URu2Si2- 自分を元素に例えると:26Fe (鉄) |
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修士1年 M1 研究内容: 自分を元素に例えると:**** |
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修士1年 M1 研究内容: 自分を元素に例えると:**** |
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---------- Undergraduate Students ---------- |
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学士4年 B4 研究内容: 自分を元素に例えると: |
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学士4年 B4 研究内容: 自分を元素に例えると: |
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学士4年 B4 研究内容: 自分を元素に例えると: |
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学士4年 B4 研究内容: 自分を元素に例えると: |
[TOPICS] 単サイト四極子近藤効果の検証:
Y1-xPrxIr2Zn20 の弾性応答に観る 対数的温度変化
Abstract
A direct evidence for the a single-site two-channel (electric quadrupolar) Kondo effect is obtained by ultrasonic measurements on the diluted Pr compound Y_0.966 Pr_0.034 Ir_2 Zn_20 at very low temperatures down to 0.04 K. The elastic moduli (C11−C12)/2, corresponding to the Γ3(E)-symmetry electric-quadrupolar response, reveals a logarithmic temperature dependence in the low-magnetic-field region below ∼0.3 K, where non-Fermi liquid behavior in the specific heat and electrical resistivity have previously been reported. This logarithmic temperature variation manifested in the Γ3 quadrupolar susceptibility was the last missing piece of the puzzle to demonstrate this long-standing issue, since it had been theoretically predicted in 30 years ago.
For more information please see our paper:
T. Yanagisawa et al.,
Phys. Rev. Lett. 123 (2019) 067201.
(also available on arXiv:1907.06284 [cond-mat.str-el])
日本語解説
「超音波で観る固体中の電子 〜30年来の謎「四極子近藤効果」を実証〜」
たくさんの電子を集めて冷やすと液体のようになる
「電子」は、我々の生活においてもっとも身近な素粒子です。しかし、固体中で電子が多数集まると、単一の電子とは異なる振る舞いを示します。金属中において電気の伝導を担う電子は、初等物理学では自由電子(理想気体模型)として扱われますが、強相関電子系と呼ばれる一部の化合物における伝導電子は、もはや自由では無く、流体モデルとして扱われます。そこでは電子間に様々な相互作用が働き、それぞれの電子は相互作用の衣をまとった準粒子とみなされ、その結果、電子間の相互作用が繰り込まれた電子の有効的な質量が通常の電子の質量の1000倍にも達する「重い電子」状態が現れます。このように強く相互作用する電子(フェルミ粒子)を記述する有効理論モデルは、1956年にソビエトの物理学者レフ・ランダウによって導入された概念である「フェルミ流体」として記述されます。
一方、「近藤効果」とは、金属中の伝導電子が不純物イオンの内部自由度を変化させる過程で生じる電子の多体効果です。その先駆けとなる理論研究は、1964年に日本人物理学者の近藤淳によって報告され [参考文献1]、現在では希土類化合物における半金属状態など多彩な物性を演出していることが知られています。上記の重い電子状態でも、近藤効果が本質的な役割を担っているのです。
30年来の謎「四極子近藤効果」とは?
1980年代に、上記の近藤効果を拡張した多チャンネル近藤効果が提案されました。ここでの多チャンネルとは、近藤効果で電子が用いる内部自由度が複数あることを意味します。
電子は磁石としての性質を担うスピン自由度と、電気としての性質を担う電荷・軌道自由度を持ちます。原著論文における近藤効果は、金属中の伝導電子と磁性不純物がそれぞれの電子のスピン自由度(チャンネル数は1)を用いて束縛状態を作ります。その次数を1つ上げた「2チャンネル近藤効果」では、スピン自由度に加え、局在電子の持つ軌道自由度に由来する異方的電荷分布である電気四極子自由度(チャンネル数は2)を用います。この現象は「四極子近藤効果」と呼ばれ、従来の近藤効果によるフェルミ液体状態から逸脱した挙動(非フェルミ液体状態)の発現が予言されました。この四極子近藤効果の理論モデル[参考文献2]は、主にウランを含む金属間化合物で見出された非フェルミ液体的状態を説明するために提案されました。しかし、放射性物質であり、国際的規制物資であるウランの取り扱いは難しく、またウランの価数が不確定であることや、ウランが持つ5f電子系特有の局在性・遍歴性の二面性があることから、理論的な解釈も難しいため、長年の研究にもかかわらず、四極子近藤効果の実証には至っていませんでした。特に、本現象の主役である電気四極子を直接的に捉える実験は、これまでほとんど行われてきませんでした。
図1 Pr3+(プラセオジム)イオンの局在的な電子が持つΓ3対称性の電気四極子が、等価な二つの伝導バンドの伝導電子が持つ電気四極子の成分により遮蔽される。
失われたパズルのピースを求めて
その間、四極子近藤効果の新たな候補物質を求めて、世界中で物質探索が行われました。近年、共同研究者の鬼丸ら(広島大学)は、4f2配位をとるPr(プラセオジム)を含む立方晶カゴ状化合物の純良単結晶の育成に成功し、この物質が四極子近藤効果の候補物質であることを提案しました。鬼丸らは、結晶内のPrの4f電子の基底状態が有するEg(Γ3)対称性の電気四極子自由度が絶対温度0.11ケルビンで凍結(四極子秩序)し、さらに0.05ケルビンで超伝導を示すことを発見しました。さらに、四極子秩序の近傍で、電気抵抗率や比熱が通常の金属とは全く異なる非フェルミ液体的挙動を示すことから、同化合物のPrを非磁性のイットリウム(元素記号: Y、原子番号39)によって希釈する系統的研究を行い、その非フェルミ液体状態が30年前に理論提案されていた四極子近藤効果によって説明できる可能性を指摘しました。Prはウラン系に比べて取り扱いに関する制約が少なく、4f電子の基底状態もはっきりしているため、「失われたパズルのピース」である、電気四極子の直接観測を実行する準備が整ったわけです。
図2 超音波を固体中に入射することで誘起される弾性波の概念図。弾性波のスナップショットを見ると、歪み・回転からなる格子変形が局所的に生じており、それらが作る静電場と同じ対称性を持つ電気四極子が結合する。
超音波で電子を観る?
我々は、電気四極子の応答を直接観測するために「超音波」を用いました。固体中に入射された超音波は弾性波として固体中を伝播し、結晶格子を歪ませます。局所的にその歪みは「歪み場」として捉えることができます。その歪み場は同じ対称性を持つ異方的な局所電荷分布である「電気四極子」と結合します。すなわち、弾性率を精密に測定することで、固体中の電子が持つ電気四極子自由度の応答を感受率として観測できます。本研究では広島大学で作製された試料の中から、PrイオンをYによって3.4%まで希釈したY0.966Pr0.034Ir2Zn20の純良単結晶を選び、超音波実験に用いました。このような希釈系ではPrイオンは相互作用による影響を受けることなく、単一イオンの応答を観測できます。一方、磁性を担うPrイオンは、依然として16個のZn原子が作るカゴに内包されており、4f電子が多数の配位子に囲まれている状況により伝導電子との混成効果は増強されます。
図3 カゴ状化合物PrIr2Zn20の結晶構造。4f2配位Pr(プラセオジム)イオンは、Zn(亜鉛)が作る原子のカゴに内包されている。このPrの大部分を非磁性のY(イットリウム)イオンに置換し、Prが孤立した状況を創り出した。
本研究では横波弾性率(C11−C12)/2の温度変化を精密に測定しました。この横波弾性率は、立方晶系におけるEg(Γ3)対称性を持つ電気四極子の感受率として理解できます。絶対温度2 ケルビン以下でその温度変化がキュリー的な減少(温度に反比例した軟化)を示すことから、希釈された3.4%のPrが依然としてPr 100%の母物質と同じEg(Γ3)対称性の結晶場基底状態を保持していることが証明されました。
さらなる低温へ
一方、立方晶系が非フェルミ液体的な挙動を示す0.3ケルビン以下の「極低温」領域での四極子近藤効果を検証するには、特殊な冷凍機と強力な磁場を用いる必要がありました。そこで、ドイツ・ヘルムホルツ研究センターのドレスデン強磁場研究所との国際共同研究により、ヘリウム3-ヘリウム4希釈冷凍機と超伝導磁石、超音波位相比較法測定装置を組み合わせることで、強磁場下における0.04ケルビンの極低温での超音波観測を実現しました。弾性率の温度変化の温度軸を対数で表示しすると、弾性率が直線に乗る、すなわち+logTに比例した温度依存性を示すことがわかります。この特徴的な温度依存性が現れる温度・磁場領域は、比熱・電気抵抗率が非フェルミ液体状態を示す領域と同じであり、四極子近藤効果の理論予想[参考文献2]と一致します。以上のことから、本研究の超音波実験は、四極子近藤効果による四極子の応答を世界で初めて直接観測したものであり、四極子近藤効果を実験的に実証したものであると結論できます。[参考文献3]
図4 希釈系(Y1-xPrx)Ir2Zn20の横波弾性率(C11−C12)/2の温度変化と極低温領域に現れる対数的温度依存性。縦軸は物質の「硬さ」に対応し、温度を下げると(グラフの左側に行くほど)、3ケルビンまで徐々に硬くなっていた物質が、それ以下で急激に「柔らかく」なっていることがわかる。内挿図は格子振動(フォノン)の影響によるバックグラウンドを差し引いたデータ。極低温で直線に乗る(+logTに比例した温度依存性を示す)ことが判る。
今後の展開
電気四極子やさらに高次の多極子が示す新規現象は、将来の機能性デバイスや量子情報素子開発への応用が期待できます。今回実証されたのはその基礎となる現象であるため、その物理をしっかりと構築することが重要です。今後は、希釈濃度を変えた試料やその他の候補物質に対する超音波を用いた系統的な研究により、四極子近藤効果の直接的証拠をさらに追求する必要があります。特に、当初の理論で提案されていたウランを含む金属間化合物においても、立方晶系と同様に単サイトの四極子近藤効果の傍証が見つかっているため、本研究で採用した超音波測定の手法を応用して、その機構解明を目指しています。
書いた人
(左から):山根悠(広大先端)・柳澤達也(北大理)・鬼丸孝博(広大先端)
参考文献
[1] J. Kondo, Prog. Theor. Phys. 32, 37 (1964).
[2] D. L. Cox, Phys. Rev. Lett. 59, 1240 (1987).
[3] T. Yanagisawa et al. , Phys. Rev. Lett. 123, 067201 (2019).
[TOPICS] UNi4Bのトロイダル秩序状態における新しい電流誘起磁化現象
【要旨】金属反強磁性体UNi4Bに対し電流下の磁化測定を行い、電流印加により反強磁性秩序相内で付加的に磁化が誘起される現象を世界で初めて観測した。本系の反強磁性は空間的に拡張された多極子の一つである磁気トロイダルモーメントの強的秩序とみなせるため、金属化合物におけるこの新しい電気磁気効果の発見は、先行する理論が本質的に正しいことを実験的に示している。本成果により今後は多様な反強磁性体が電気磁気効果や拡張された多極子の研究の舞台となると期待される。多極子は系の異方的な電荷・磁荷分布を記述する物理量で、電荷分布を表すスカラーポテンシャルと磁荷分布を表すベクトルポテンシャルの展開から導かれる。特にf電子系をはじめとする強いスピン軌道相互作用を有する系においては、高次の多極子が秩序を支配することもあり、系の物性を記述するうえで不可欠な概念となっている。これまで、多極子の議論はそのほとんどが局在した磁性イオンと大局的な空間反転対称性を有する系に限られており、空間反転対称性が保たれた(空間反転対称性のパリティが偶の)多極子のみを扱っていたが、近年は、空間反転対称性を有しない奇パリティの多極子の理論研究が盛んに進められている。なかでも、複数のイオンサイトを一つのクラスターとして考えることにより、これまで平凡な反強的秩序と思われていたものがクラスターの対称性に合った特定の多極子秩序とみなせる、とする理論は特に注目を集めている。これはとりもなおさず、多極子の定義を空間的に拡張することを意味する。この理論の特徴的な点の一つとして、常磁性状態で空間反転対称性を有する系においても、反強的秩序に伴いパリティが破れ、奇パリティの多極子が秩序し得ることが挙げられる。例えば、ジグザグ鎖やハニカム、ダイヤモンド構造などはパリティが偶であるが、イオン位置では局所的に空間反転対称性が破れており、それに由来する奇数次の結晶電場が存在する。この電場は系のパリティを反映して交代的な配列をなし、総和としては0となっている。しかし、ジグザグ鎖上でイオン位置に反強磁性秩序が生じると、結晶電場と磁気モーメントの結合により秩序に伴い系全体のパリティが破れ、トロイダルモーメントや磁気四極子など奇パリティ多極子が有限となり得る。これらの奇パリティの多極子が強的に秩序した場合、電流による磁化誘起現象などの非対角応答をはじめ、多様な新奇物性が生じることが理論提案されている。以上の研究は現状では理論が先行しており、実験的検証は始まったばかりである。
最近、我々の研究グループは、上記の理論を実験的に検証するため、磁気トロイダルモーメントの強的秩序が発現していると理論予想されている金属反強磁性体UNi4Bにおいて定電流下の磁化測定を行い、電流によって秩序相内で付加的に磁化が誘起される現象を初めて観測した。この成果は、日本物理学会が発行する英文誌Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)の 2018年2月号に掲載された。
UNi4BはUが僅かに歪んだ三角格子を組む結晶構造をとる。Uを囲むNiとBの配置からU位置には空間反転対称性がなく、本系は局所的に空間反転対称性が破れた系の一つである。本系の TN = 20.4 K以下の反強磁性相では、Uのうちハニカムをつくる2/3が三角格子面内に寝た渦状の磁気モーメント配列をもつことが提案されている(図1)。この渦状の磁気構造は磁気トロイダルモーメントtの定義と同じであることから、tが三角格子面に垂直な方向([0001])を向いた強トロイダル秩序とみなせる(図2)。理論では強トロイダル秩序相内で面内に電流を印加することにより、電流とtの両者に垂直な方向に磁化が誘起することが予言されている。本論文では三角格子面内[2-1-10]方向の電流印加により、面内でそれに垂直な[01-10]方向への磁化が付加的に誘起されていることを明らかにしている(図3)。著者らはこの印加電流による磁化誘起現象の異方性が理論と完全には整合しないことから、詳細な結晶・磁気構造に立ち戻った検証が必要としているが、局所的に空間反転対称性が破れた系において、磁気秩序に伴う電流による磁化誘起が観測されたという点において、本論文は理論の本質的な正しさを支持している。それはつまり、これまで平凡な反強磁性体と思われていた化合物群においても、奇パリティ多極子秩序を内包しているものがあり、電気磁気効果をはじめとする多様な物性研究の舞台となり得ることを強く示唆している。
図1 [0001]方向から見たUNi4BのUを含む層の結晶・磁気構造。結晶構造は実際には斜方晶だが、六方晶からの歪みが微小であるため六方晶の軸表記を用いている。ハニカムをなす橙の実線は磁気トロイダルモーメント(面に垂直な赤矢印)を構成する磁気モーメント(青矢印)を繋いでいる。
図2 蜂の巣構造状の渦状の磁気秩序状態(トロイダル秩序相と呼ばれる) 出典:S. Hayami, H. Kusunose, and Y. Motome, Phys. Rev. B 90, 024432 (2014). (この論文が、上述の理論予想の論文です。第1著者の速水賢は北大の理論グループの助教です。)。
図3 我々が観測した電流誘起磁化の様子(22 K以下のトロイダル秩序相において電流方向で反転する磁化が生じていることがわかる)。
原論文 Evidence of a New Current-Induced Magnetoelectric Effect in a Toroidal Magnetic Ordered State of UNi4B
Hiraku Saito, Kenta Uenishi, Naoyuki Miura, Chihiro Tabata, Hiroyuki Hidaka, Tatsuya Yanagisawa, and Hiroshi Amitsuka: J. Phys. Soc. Jpn. 87, 033702 (2018).
頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム
「 核物質を含む化合物の強相関電子物性研究のための日米欧ネットワークの構築 」
事業紹介
平成25年度日本学術振興会 頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム に採択されました。事業名は「 核物質を含む化合物の強相関電子物性研究のための日米欧ネットワークの構築 」で、代表者は網塚浩教授です。2014年2月〜2016年3月までの間、若手研究者3名が米国・ドイツ・チェコに派遣され、研究ネットワークを構築しました。
このページでは、本事業の目的・概要をご紹介します。
年度毎の人的交流・研究ネットワーク構築の履歴はこちらFY2015 / FY2014 / FY2013
研究業績発表成果はこちら
【計画概要】
・国際規制物資であるウランを含む化合物の研究分野で、枢要な位置を占めている一流研究機関に若手研究者を戦略的に派遣し、日本国外で調達したウラン化合物を用いて、それぞれの国の強み(研究施設・地政学上の関係・認識知)を活かしたグローバルな観点で最先端物性研究を行い、国際共同研究を推進する。
・また、将来の人的ネットワークの継続を目指して、北海道大学に於けるアクチノイド化合物の日米欧国際共同研究基盤の構築とその発展を担うリーダーの育成を目指す.
【若手研究者の派遣と国際共同研究との関連】
本国は国際規制物資であるウランやトリウムの取り扱いに対して、特に厳しい制限が課されており、研究者個人レベルでウラン化合物を日本国外に持ち出したり日本国内に持ち込んだりすることは基本的に不可能である。そのため純粋なる学術研究目的であっても,それぞれの国に局在した環境でしか研究が行うことができないという大きな制約がある。これはウラン化合物の研究分野のグローバルな若手人材育成と基礎研究の発展を目指す上での大きな障壁となっている。これらの障壁を乗り越えるには国際ルールを遵守しつつ、草の根の人材交流(頭脳循環)を行うしかない。よって、軍事目的ではない純粋なる学術交流の観点から国境や法規制の壁を取り払ったアクチノイド化合物の研究基盤の構築を行うと同時に、若手研究者の人材確保と育成を鑑みたアクチノイド化合物研究の新たな人材交流のチャンネルの開拓を目指す。
本事業ではアクチノイド系化合物を含む強相関系物性研究で世界のトップクラスである下記の大学・研究施設と連携を行う。派遣国は政治的にも日本国と良好な関係を保っている国であり、複数機関と連携することで、より柔軟な試料調達体制が確立される。
【若手研究者の派遣と国際共同研究との関連】
本国は国際規制物資であるウランやトリウムの取り扱いに対して、特に厳しい制限が課されており、研究者個人レベルでウラン化合物を日本国外に持ち出したり日本国内に持ち込んだりすることは基本的に不可能である。そのため純粋なる学術研究目的であっても,それぞれの国に局在した環境でしか研究が行うことができないという大きな制約がある。これはウラン化合物の研究分野のグローバルな若手人材育成と基礎研究の発展を目指す上での大きな障壁となっている。これらの障壁を乗り越えるには国際ルールを遵守しつつ、草の根の人材交流(頭脳循環)を行うしかない。よって、軍事目的ではない純粋なる学術交流の観点から国境や法規制の壁を取り払ったアクチノイド化合物の研究基盤の構築を行うと同時に、若手研究者の人材確保と育成を鑑みたアクチノイド化合物研究の新たな人材交流のチャンネルの開拓を目指す。
【若手研究者の海外派遣実績】
本事業では、研究者・研究環境の保安経験と国際法規の遵守を重要視し、アクチノイド系化合物を用いる物性研究の実務経験を2年以上有することと、TOEFL iBT 70点以上もしくはそれに値する外国語コミュニケーション能力を有すること、を選考基準に若手研究者を選抜し、米国、チェコ、ドイツへそれぞれ交互に派遣した。
H.25, H27 | 門別翔太(北大院理 博士後期課程) | ドイツ(ドレスデン) | 321日 | |
H.26 | 柳澤達也(北大理 准教授) | アメリカ(ラホヤ) | 193日 | |
ドイツ(ドレスデン) | 164日 | |||
H.26-27 | 三浦植幸(北大院理 博士後期課程) | チェコ(プラハ) | 355日 |
【本事業の主な業績】
'Nonmagnetic ground state in the cubic compounds PrNi2Cd20 and PrPd2Cd20'
'Crystalline Electric Field and Kondo Effect in SmOs4Sb12'
'Study of Localized Character of 4f Electrons and Ultrasonic Dispersions in SmOs4Sb12 by High-Pressure High-Frequency Ultrasonic Measurements'
'Evidence for the Single-Site Quadrupolar Kondo Effect in the Dilute non-Kramers System Y1-xPrxIr2Zn20'
'Logarithmic Elastic Response in the Dilute non-Kramers System Y1-xPrxIr2Zn20'
'Quadrupolar Susceptibility and Magnetic Phase Diagram of PrNi2Cd20 with Non-Kramers Doublet Ground State'
'Magnetoelastic phenomena in antiferromagnetic uranium intermetallics: The
UAu2Si2 case'
'Peculiar Magnetism of UAu2Si2'
'Superconductivity in single crystalline ThBe13 and LuBe13'
'Search for multipolar instability in URu2Si2 studied by
ultrasonic measurements under pulsed magnetic field'
'Ultrasonic Investigation of Magnetic Ordering with Higher-Order Interactions in the Cage-Structured Compound U3Pd20Si6'
'Uncompensated Antiferromagnetic Ordering of UAu2Si2 Studied by 29Si-NMR'
UC San Diego (U.S.A.)
HZDR (Germany)
Chalres Univ. (Czech)
Grenoble (France)
Hokkaido Univ. (Domestic)