緩和法比熱測定
熱緩和法とは、試料に与えていた熱を切った際の試料温度の緩和現象から比熱を求める実験手法です。具体的には、試料の回りに精密に温度コントロール可能な熱浴T0を作り、試料と熱浴との間を比較的弱い熱伝導パス(熱伝導度KW)で結びます。(図1)試料部には小型の温度計とヒーターを装着し、このヒーターに通電する事で試料温度を熱浴よりΔT だけ高い定常状態で保持しておきます。その後、一気にヒーターを切ると熱伝導パスを通じて試料から熱浴に熱が逃げて行きます。この温度緩和過程は通常指数関数型になり、その時定数を解析する事により試料部の比熱を求めます。 この実験手法により、わずか数mg程度の小さな試料の比熱を広い温度範囲かつ強磁場中で測る事が出来ます。比熱からは物質のエントロピーを見積もる事ができて、系のもつ微視的自由度の振る舞いを予想できます。比熱は物質の性質を理解する上で最も重要な物理量のひとつです。我々の研究室では、Heliox :0.36 [K] < T < 200 [K] 、 B < 12 [T] (図2)
PPMS :2 [K] < T < 380 [K] 、 B < 9 [T] (図3)
これらの装置により比熱測定を行っています。図4にPPMSでの実際の測定結果を示します。
図1 |
図2 |
図3 |
図4 |
X線を用いた物質評価
アーク炉やプラズマジェット炉で作製した試料をX線を用いて評価します。評価の手法はラウエ法、粉末ディフラクトメーター法、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer)です。 ・ラウエ法 図1のようにX線を単結晶試料に当てて、散乱したX線でフィルムを感光させます。このときブラッグの反射条件を満たしてX線が強めあうと図2のように黒い斑点がフィルムに現れます。この斑点の対称性(4回対称、鏡映面等)は結晶の対称性を反映しているので結晶面の対称性、軸方向が分かります。|
図1 ラウエ法の概念図(背面反射法) |
図2 ラウエ写真の例 |

図3 粉末ディフラクトメーター法の概念図
・EPMA 試料に電子線を照射すると図5のような反応がおこります。この中の特性X線いうものは波長が原子によって決まっているX線です。電子線を照射したときに飛び出してくる特性X線の波長のスペクトルを調べることで電子線の当たった領域の構成元素と割合が分かります。
図4 電子線を試料に照射したときの反応
MPMS用ピストンシリンダーによる高圧下DC磁化測定
ドイツ・Braunschbeing工科大学Stefan Su(ウムラウト)llow 教授らによって開発されたDC磁化測定用の単層式ピストンシリンダーセル(Cu-Be合金製)です。市販のSQUID磁力計(MPMS, Quantum Design社)に取り付け可能となっており,理想的なSQUID電圧波形が得られるように非常に細長い構造になっています(全長~150 mm)。温度は2 K、圧力は約1 GPa(10000気圧)までの測定が可能です。
図1 MPMS用ピストンシリンダーセル概観
インデンターセルを用いた高圧下電気抵抗・交流帯磁率測定

図1 インデンターセル概観
インデンターセルの簡単な模式図を図2に示しています。中心に穴の開いたNi-Cr-Al合金製ブロック(hole piece)にあけた穴に液体の圧力媒体を満たし、先端部分に試料を取り付けたインデンター(NMWC:非磁性タングステン鋼)を差し込みます。この状態からプレス機で加圧することによって、hole pieceの穴を変形させて圧力を発生させる仕組みです。圧力はロックナットを締めることで保持しています。
図2 インデンター型圧力セルの模式図
電気抵抗測定には4端子法を用いています。端子付にはスポット溶接や銀ぺーストなどをもちいています。(図3)非常に細かい作業のため写真のように顕微鏡を見ながらの作業となるため学生たちもはじめは苦労しますが 、一か月ほどで誰でもセッティングができるようになります。(図4)
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図3 スポット溶接をしているところ |
図4 |
図6は私たちの研究室の学生が手作りした「巻き線機」です。手作り感たっぷりですが、1mm以下のコイルを非常に美しく巻くことができる優れモノです。
図5 インデンターセルに内蔵する微小コイル |
図6 ホームメイド「巻き線機」 |
放電加工機
金属ワイヤーに電気を通し、試料を溶かしながら正確に平面を出すことで、試料の整形を行うことができます。 試料の切断は油の中で行われ、放電による過剰な発熱や、試料の切りくずが空気中に舞うことを防ぎます。よって、放射性物質でも安全に試料整形することができます。
図1 実際にスパークカッターで試料を加工する過程
(軸方向はX線ラウエ法などで決定している)










