科学基礎論研究室では、10年ほど前から独自の研究誌を出版したいという思いを抱いてきましたが、このたびJ-Stageからようやく発刊することができましたので、ご報告いたします。私たちが研究誌Linkageを通して実現したいことは、下段の初代編集長・尾崎さんの言葉にもあるとおり、文字どおり科学哲学と科学のつながり(linkage)を築くことであり、これは科学基礎論研究室がいまの態勢になって以来、ずっと追究してきたことがらです。逆に、これを目標として掲げなければならないほど、科学哲学と科学はいまや著しく接点が失われているということです。
発刊の機運が熟したのは、2019年8月にプラハで開催された科学哲学の世界大会(CLMPST)に研究室メンバー、科研費研究メンバーの数名で参加したときでした。プラハ城を臨むヴルダヴァ川(モルダウ川)のほとりにあるパブで、メンバーが、今後の科学哲学、今後の研究室の在り方について熱く語り合ううち、何としても悲願である雑誌の発刊を実現し、科学哲学を科学に結びつけるような研究を発表しようということで、思いが完全に一つになりました。これを私たちは勝手に、「プラハの誓い」と呼んでいます。この誓いがなければ、きっとまだ話はくすぶったままだったでしょう。Linkageという名称はその場で案として出たものです。
第一巻の執筆陣は、まさにそのときのメンバーです。CLMPSTでの発表内容と必ずしも同じではないですが、いずれも ‘linkage’という目的のために執筆しました。もっとも、目的自体は明確ではあるものの、それをこの雑誌で今後どう実現していくかについては、まだ多くの議論と試行錯誤を要することと思います。まずは、この創刊の思いが潰えることのないように、年に一回、定期的な刊行をしっかり続けていきたいと思います。
なお、Linkage創刊に当たっては、編集長の尾崎有紀さん(2017年度博士課程修了)、そして副編集長の黒木薫さん(2020年度修士課程修了)のお二人に実務の面でたいへん苦労をかけました。ここに心からお礼申し上げます。尾崎さんはLinkage実現に誰よりも熱い情熱を傾けてくれました。また研究室メンバー以外で、創刊に熱心に関わっていただいた島谷健一郎さん、大久保祐作さん、また研究室メンバーで、紙媒体での発行の可能性やJ-Stageでの発行方法などを詳しく調べてくれた本間真佐人さんにお礼申し上げます。
(松王政浩)
既存の科学理論が行き詰ったとき、ある既存の科学理論と別の既存の科学理論とを統合しようとするとき、また、新しい科学理論を構築しようとするとき、そこには多かれ少なかれ何らかの哲学的考察が必要です。『リンケージ』は、そのような科学的知識の生産のための哲学の場であることを目的として創刊されます。
(初代編集長 尾崎有紀)