1957年、カナダの漁村パグウォッシュ(Pugwash)に世界各国から著名な科学者22人が集まりました。当時は、第二次世界大戦後の東西冷戦の最中であり、核開発競争と、核兵器実験による放射能の脅威が人々の不安をかき立てていた時代でした。
この会議に先立つ1955年、核兵器の廃絶と国際紛争の戦争以外の手段による解決を求める「ラッセル・アインシュタイン宣言」が出され、その11人の世界的科学者の中には、日本人として初めてノーベル賞を受賞した物理学者の湯川秀樹の署名もありました。
世界の科学者に討議を求めたこの宣言を経て、パグウォッシュに集まった科学者たちは、この会議を継続していくことを決定しました。
それから現在まで、パグウォッシュ会議は、このグループの名前となり、開催される会議名にもなりました。そこでは人類の脅威となる兵器の廃絶や、環境の持続的発展などの “科学と社会”の広い問題を取り上げ、科学者の社会的責任について討議を続けています。
決して派手な活動ではありませんが、科学と社会のつながりに心を配る科学者たちの自由な討議の場として、その存在は国際社会で大きな意義を持ち、1995年には功績を認められてノーベル平和賞を受賞しています。
日本では、第1回パグウォッシュ会議後の同年1957年、日本物理学会秋季大会の分科会の際に、湯川と朝永振一郎・小川岩雄によって報告会が杯際され、それが日本のパグウォッシュグループの誕生となりました。
50年後の今年、日本物理学会は年次大会をここ札幌で、北海道大学を主会場として行います。また、同時期に、湯川秀樹・朝永振一郎生誕百年を記念した企画展が、北海道大学総合博物館において開催されます。
この機会に、日本物理学会では、湯川・朝永の志を引き継ぎ、日本パグウォッシュ会議の活動を担ってきた小沼通二さんをゲストにお迎えして、北海道の皆さんへ20世紀の科学者から託された21世紀へのメッセージを受け取っていただきたいとの願いを込めて、道庁赤れんが庁舎において一般市民講演会を開催致します。
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