主な研究内容

★星間ガスと星生成から探る銀河の進化

銀河は多数の恒星と星間物質から成り,星間ガスから恒星を作りながら進化してきました。星間ガスは銀河によって,また同じ銀河の中でも場所によって恒星の生まれやすさ(星生成効率)が異なります。星生成効率を決める原因を明らかにするために,近傍銀河の分子ガスの大規模撮像観測プロジェクトCOMINGを進めてきました。また,銀河と銀河間空間との間の星間ガスの流出入を含め,星間ガスの分量のより正確な測定も目指しています。

★銀河の形態の定量化

銀河はその形態から渦巻銀河,楕円銀河,不規則銀河に分類されます。渦巻銀河には,銀河の内側の部分に伸びてふくらんだ構造を持つ棒渦巻銀河と呼ばれるものもあります。また,渦巻腕も2本のはっきりしたものを持つ銀河もあれば,短い多数の腕を持つものもあります。銀河はなぜこのようにさまざまな姿をしているのでしょうか? このような銀河の形態の多様性発現の原因を探るために,形態の定量化を試みています。

★南極テラヘルツ望遠鏡の観測装置・システムの製作

恒星が生まれる星間ガスは温度が低いため,主要な成分である水素分子を直接測定することができず,代わりに一酸化炭素などの分子の放射するスペクトル線を観測します。一酸化炭素のスペクトル線では検出できない「暗黒ガス」と呼ばれる成分は,サブミリ波帯の炭素原子のスペクトル線で観測できます。筑波大学や関西学院大学等と共同でサブミリ波観測に適した南極内陸部の高地に口径30cmの望遠鏡を持ち込み,銀河系やマゼラン雲の星間ガスの構造を明らかにする計画を進めています。現在,観測に必要となる電波分光計やデータ解析ソフトウェア等を製作しています。

★苫小牧11m電波望遠鏡プロジェクト(終了)

情報通信研究機構の首都圏広域地殻変動観測プロジェクトの三浦局のアンテナとして使用されていた口径11mのパラボラアンテナを国立天文台と共同で北海道大学の苫小牧研究林に移設し,受信周波数帯域を22GHz帯に変更し電波天文観測用の望遠鏡として立ち上げました。単一鏡としては,アンモニア分子などのスペクトル線による探査観測によって銀河系(天の川銀河)内の密度の高い分子ガスの分布や温度について調べました。また,質量の大きい恒星が生成される領域から放射される水蒸気メーザーのスペクトル線の時間変動をモニターし,その活動性を調べました。超長基線干渉計(VLBI)としては,大学VLBI連携観測網(JVN)の最北端局として大質量星生成領域の水蒸気メーザー観測などに参加しました。老朽化と予算源から維持が困難と判断,2015年度末に運用を停止,惜しまれながらも2021年11月に解体・撤去しました。