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学部生の皆さんへ
低次元電子系の研究と研究室について野村先生が紹介します!
研究室見学も随時受け付けています。
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低次元電子物性研究室での研究の内容を教えて下さい。
 私たちの研究は、低次元電子系というものを主に対象としています。色々な物質の性質は、電子が動くことにより現れます。低次元電子系というのは、本来3次元空間の中で動く電子が、動きが1次元に制限されて直線の動きのみになったり、2次元に制限されて平面の動きのみになったりする電子系を指します。
 また、3次元空間の中で電子が引き起こす物性というのは、1つの電子によって引き起こされるのではありません。電子1つに注目するのは素粒子の分野ですが、たくさんの電子が集まると、また違った特徴的な集団としての性質が見られます。この性質を調べるのが電子物性の研究です。何故たくさんの電子に着目するのかというと、電子がたくさん集まると電子同士に相互作用が起こります。相互作用が起こるには電子同士が近寄らないといけなく、その近寄り方にも色々あります。たとえば私たちの身の回りで考えますと、飛行機は空を3次元的に動き、車は地面を2次元的に動き、電車は線路の上を1次元的に動きます。もし線路が1本しかないとすると、互いに近づきあう電車同士というのは、必ず衝突します。車も衝突する確率はかなり高くなります。しかし、飛行機は3次元的に動けるので、お互いが衝突する確率というのは、車や電車に比べてかなり低くなります。乗り物をすべて電子として考えると、低次元にすることにより衝突(すなわち相互作用)する確率が格段に上がり、その相互作用により新しい性質が見られるのです。
 そのような新しい性質を表す状態には、色々なものがあり、たとえば電荷密度波、スピン密度波、スピンパイエルス、超伝導などが例に挙げられます。ほかにも新しい電子状態が見つかっており、私たちはそのようなものを実験的に調べています。電子が主に引き起こす性質を調べる方法として1つは、電子は電荷をもっているので、電流を流すことによる電気的な応答を調べることです。あとは、電子の重要な性質であるスピンを利用した測定もあります。スピンというのは磁気モーメントと対応しているので、磁気的な性質を調べることがもう1つの実験です。具体的には、電気抵抗を測ったり、磁場をかけて磁化率を測ったりをします。また、低次元研究室で特徴的なものとしてはトンネル顕微鏡があり、これは非常に微視的なものを見ることができます。これを用いて電子の状態を調べると、主に電気的な性質を調べることが可能であり、超伝導状態で電子がどのような状態にあるかを調べられます。
 私たちが行っているのは実験研究なので、実際に低次元電子系が実現する物質がないといけません。今主に研究しているのは、有機物の金属(有機物導体と呼ばれるもの)の研究です。私たちが研究している有機物の結晶というのは、分子を原子と見立てて、その分子を積み重ねていきます。原子というのは種類がたかだか100程度ですが、有機物の分子は、これに比べて桁違いの種類を有します。それを組み合わせることで圧倒的に多くの物質のバラエティが実現します。そのようにして構成したものの中に低次元的なものがあります。原子というのは球ですが、分子は平たかったり色々な形をしています。それらを積み重ねていくことで、電子が動ける自由度が制限されるのです。また、カーボンやMX2ナノチューブなども非常に純粋な低次元系です。私達はそのような低次元電子系を調べています。
 
低次元電子物性研究室を一言で言うとなんでしょうか?
 低次元電子系に関係した新しい物理を見つけて、それを解明していく所、でしょうか。
 
これは読んでおくといい!というオススメの本はありますか?
 私が大学の時に読んで、とても印象に残っているものなのですが、「スピンはめぐる(朝永振一郎著、中央公論社)」です。スピン、というのは物性を考える上で非常に重要なものです。
 
低次元電子物性研究室へ来るにあたって、特に勉強するべきものは何ですか?
 やはり基礎的なことが大切ですね。特に研究をしていくにあたって、量子力学、統計力学は重要になってきます。基本的な所は理解しておいてほしいですが、難しい話は必要ないです。やはり基礎力のある人は伸びます。もちろん研究室に入ってから勉強することはたくさんありますが、そこは自分の研究をしながら少しずつ勉強をしていけばよいと思います。
 
今後、低次元電子物性という分野はどのように発展していくと思いますか?
 低次元系というのは相互作用の起こりやすい系です。それゆえに、新しい物理の宝庫なのです。化学との協力で新しい物質ができ、その物質の電子が引き起こす物性を発見し、そこから新しい物理ができて更に発展していくのです。もちろん高次元で考えることも大切なのですが、低次元系というのはこれから重要なキーワードになっていくと思います。
 最近の低次元電子系での特徴としては、1957年にBCS理論というものにより超伝導のメカニズムは解明されました。超伝導というのは電気抵抗がゼロになる性質です。さらに1980年以降様々な変わった超伝導体が見つかっています。たとえば、高温超伝導体という銅酸化物で起こる超伝導体、有機物超伝導体といったようなものが見つかっています。超伝導というのはクーパーペアという電子のペアができることによりおきます。そのペアのできるメカニズムが、昔の超伝導体とは違うものが最近色々見つかっています。これらをトンネル顕微鏡で調べると、それらの構造がわかります。あとは、核磁気共鳴という方法もあり、これも電子の構造を調べる非常に有効な手段です。さらには、強い磁場をかけることにより電子の動きを制限し、新しい物理が発見できることがあります。
 あと、うちの研究室でやっているわけではないのですが、有機物トランジスタというものも開発されつつあります。これは非常に薄く軽いもので、場合によってはプリンタで印刷するようにして紙面上にトランジスタを作ることも可能になります。私たちが直接そのようなものを研究している訳ではありませんが、低次元系の基礎研究を進めていくことで、電子の絡んだ色々な応用が可能になるのです。
 
最後に何かひとことお願いします!  
 物性に限ることなく、ものに興味を持つことが大切です。また、若い人たちを見ますと、自分でものを考える習慣のある人が少ない気がします。物理というのは、実際に起こる現象を相手にするものです。暗記して知識を蓄えることも大事なことですが、ものに興味を持ち、それが何故起こるのか、更にはそれを発展させてもっと違う性質が出ないか、などと興味を持って進めていける人は様々な分野で将来的にも期待されます。物理でなくても論理的思考ができる人は、何をしても新しい発想ができると思います。また、最近は色々な外国の研究者や物理以外の研究者と共同研究する機会が増えています。なので、いろいろな分野の人と議論ができること、外国へどんどん出ていき研究しよう、という意欲を持つことも大切ですね。もちろんすべてが自分の思い通りにいくわけではありませんが、いろいろ失敗しながらもやってみることが大切ではないでしょうか。
 
さらに詳しく知りたい方は研究室へ見学に来てください!
 
 

 

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