水素結合をもつ強誘電体などの構造相転移や同位体効果の起源を、主として構造面か ら研究しています。
KH2PO4 (KDP) などある種の結晶の 温度や圧力を変化させると、 構造の変化を伴う相転移(構造相転移)をします。この点(相転移点)を境として、 自発分極が現れる秩序相(強誘電相)に変化します。KDP などでは、水素を重水素に 置き換えると(重水素置換)、相転移温度が100K以上も上昇することが知られていま す。同位体で置き換えただけでおこるこの大きな効果(同位体効果)は、身近な例に たとえていうならば、水の氷点が重水素置換により 0 oC から 100oC へと上昇するような もので、興味ある問題として知られてきました。最近は、重水素置換により新たな相 が出現する(重水素化誘起相転移)現象も見つかっています。これらの問題の微視的 な立場からの理解をめざしています。
実験手段は結合電子密度に焦点をあてた精密X線回折や中性子線回折で、 データの測定は現在は共同研究先のスウェーデン・ウプサラ大学で行っています。 研究室では主として、結晶作成、予備的測定、及びデータ解 析を行っています。現在のテーマは、水素結合のネットワークを持たない( 0 次元) 水素結晶 M3H(XO4)2(M=K, Rb, Cs ; X=S, Se) の重水素化誘起構造相転移の研究、 KDP の参照物質としての NaH2PO4 の (化学結合に関連した)変形電子密度の研究、等です。
市川瑞彦(助教授) TEL: 011-706-4416
尾崎良樹 南部広樹