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講演題目: ミュオンスピン緩和法(μSR)の概説および高温超伝導体
           における1次元ストライプ相関の最近の研究

講 師 : 渡邊功雄 (理化学研究所 ミュオン科学)

日 時 : 平成12年10月31日(火) 17:00-
場 所 : 北海道大学大学院理学研究科物理学専攻 大学院講義室
       理学部 2号館(2−11号室)

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要 旨 :
  ミュオンを用いた物性実験自体は約30年以上前から開始されているが、この手法
が物性実験として強力に用いられるようになってから15年程度しかたっていない。
実験手法そのものが原子核実験から派生したものであって、物性実験者にはなか
なか理解しずらい点が多い。ミュオン粒子自体は加速器によって人工的に作られ、
外部から試料中に打ち込まれて用いられる。我々理研ミュオン科学研究室では、
イギリスの Rutherford-Appleton 研究所に、世界最強度を誇るミュオン施設を建
設し、物性および原子核実験を継続している。
 本講演においては、このミュオン粒子を用いた物性実験手法である、ミュオンスピン
緩和方(μSR)の解説、およびμSRを用いた最近の高温超電導体の研究について
の報告を行う。特に高温超電導体で最近ホットな話題である『ストライプ相関』に関
してμSRがどのように有効に適応されているかということに主眼をおいて本講演を
構成する。
 スピンとホールが1次元ストライプ状に秩序化する『ストライプ相関』が認識される
原因となったものがいわゆる『1/8問題』と呼ばれる現象である。これはLa系高
温超伝導酸化物において、ホール濃度がCu原子あたり約1/8の濃度のところで超伝
導が異常に抑制される現象である。この効果が発見された直後、μSRは他の実験
手法に先駆けて超伝導の抑制と共に磁気秩序状態が発生することを明らかにしてき
た。近年においては、この『1/8問題』がLa系固有の効果ではなく、Bi221
2系、およびY系にも存在することをμSRは明らかにしてきた。ミュオン粒子自身の高い
回転磁気比のために、他の測定手法では観測しずらい微妙な磁気相関の変化をとらえ、
それぞれの系においてホール濃度が1/8近傍において、La系同様に磁気的な異常
がμSRによって確認された。また、磁場を印加した状態でのμSR測定からCuスピンの
動的拡散運動の次元性を調べ、1次元ストライプ相関の存在が、間接的にではあるが、
μSRからも示されている。

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世話人  古川 裕次 (北海道大学大学院理学研究科)
          (011-706-4424、furu@phys.sci.hokudai.ac.jp)

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