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[TOPICS] UNi4Bのトロイダル秩序状態における新しい電流誘起磁化現象

【要旨】金属反強磁性体UNi4Bに対し電流下の磁化測定を行い、電流印加により反強磁性秩序相内で付加的に磁化が誘起される現象を世界で初めて観測した。本系の反強磁性は空間的に拡張された多極子の一つである磁気トロイダルモーメントの強的秩序とみなせるため、金属化合物におけるこの新しい電気磁気効果の発見は、先行する理論が本質的に正しいことを実験的に示している。本成果により今後は多様な反強磁性体が電気磁気効果や拡張された多極子の研究の舞台となると期待される。

 多極子は系の異方的な電荷・磁荷分布を記述する物理量で、電荷分布を表すスカラーポテンシャルと磁荷分布を表すベクトルポテンシャルの展開から導かれる。特にf電子系をはじめとする強いスピン軌道相互作用を有する系においては、高次の多極子が秩序を支配することもあり、系の物性を記述するうえで不可欠な概念となっている。これまで、多極子の議論はそのほとんどが局在した磁性イオンと大局的な空間反転対称性を有する系に限られており、空間反転対称性が保たれた(空間反転対称性のパリティが偶の)多極子のみを扱っていたが、近年は、空間反転対称性を有しない奇パリティの多極子の理論研究が盛んに進められている。なかでも、複数のイオンサイトを一つのクラスターとして考えることにより、これまで平凡な反強的秩序と思われていたものがクラスターの対称性に合った特定の多極子秩序とみなせる、とする理論は特に注目を集めている。これはとりもなおさず、多極子の定義を空間的に拡張することを意味する。この理論の特徴的な点の一つとして、常磁性状態で空間反転対称性を有する系においても、反強的秩序に伴いパリティが破れ、奇パリティの多極子が秩序し得ることが挙げられる。例えば、ジグザグ鎖やハニカム、ダイヤモンド構造などはパリティが偶であるが、イオン位置では局所的に空間反転対称性が破れており、それに由来する奇数次の結晶電場が存在する。この電場は系のパリティを反映して交代的な配列をなし、総和としては0となっている。しかし、ジグザグ鎖上でイオン位置に反強磁性秩序が生じると、結晶電場と磁気モーメントの結合により秩序に伴い系全体のパリティが破れ、トロイダルモーメントや磁気四極子など奇パリティ多極子が有限となり得る。これらの奇パリティの多極子が強的に秩序した場合、電流による磁化誘起現象などの非対角応答をはじめ、多様な新奇物性が生じることが理論提案されている。以上の研究は現状では理論が先行しており、実験的検証は始まったばかりである。
 最近、我々の研究グループは、上記の理論を実験的に検証するため、磁気トロイダルモーメントの強的秩序が発現していると理論予想されている金属反強磁性体UNi4Bにおいて定電流下の磁化測定を行い、電流によって秩序相内で付加的に磁化が誘起される現象を初めて観測した。この成果は、日本物理学会が発行する英文誌Journal of the Physical Society of Japan (JPSJ)の 2018年2月号に掲載された。
 UNi4BはUが僅かに歪んだ三角格子を組む結晶構造をとる。Uを囲むNiとBの配置からU位置には空間反転対称性がなく、本系は局所的に空間反転対称性が破れた系の一つである。本系の TN = 20.4 K以下の反強磁性相では、Uのうちハニカムをつくる2/3が三角格子面内に寝た渦状の磁気モーメント配列をもつことが提案されている(図1)。この渦状の磁気構造は磁気トロイダルモーメントtの定義と同じであることから、tが三角格子面に垂直な方向([0001])を向いた強トロイダル秩序とみなせる(図2)。理論では強トロイダル秩序相内で面内に電流を印加することにより、電流とtの両者に垂直な方向に磁化が誘起することが予言されている。本論文では三角格子面内[2-1-10]方向の電流印加により、面内でそれに垂直な[01-10]方向への磁化が付加的に誘起されていることを明らかにしている(図3)。著者らはこの印加電流による磁化誘起現象の異方性が理論と完全には整合しないことから、詳細な結晶・磁気構造に立ち戻った検証が必要としているが、局所的に空間反転対称性が破れた系において、磁気秩序に伴う電流による磁化誘起が観測されたという点において、本論文は理論の本質的な正しさを支持している。それはつまり、これまで平凡な反強磁性体と思われていた化合物群においても、奇パリティ多極子秩序を内包しているものがあり、電気磁気効果をはじめとする多様な物性研究の舞台となり得ることを強く示唆している。


図1 [0001]方向から見たUNi4BのUを含む層の結晶・磁気構造。結晶構造は実際には斜方晶だが、六方晶からの歪みが微小であるため六方晶の軸表記を用いている。ハニカムをなす橙の実線は磁気トロイダルモーメント(面に垂直な赤矢印)を構成する磁気モーメント(青矢印)を繋いでいる。

図2 蜂の巣構造状の渦状の磁気秩序状態(トロイダル秩序相と呼ばれる) 出典:S. Hayami, H. Kusunose, and Y. Motome, Phys. Rev. B 90, 024432 (2014). (この論文が、上述の理論予想の論文です。第1著者の速水賢は北大の理論グループの助教です。)。

図3 我々が観測した電流誘起磁化の様子(22 K以下のトロイダル秩序相において電流方向で反転する磁化が生じていることがわかる)。






原論文  Evidence of a New Current-Induced Magnetoelectric Effect in a Toroidal Magnetic Ordered State of UNi4B


Hiraku Saito, Kenta Uenishi, Naoyuki Miura, Chihiro Tabata, Hiroyuki Hidaka, Tatsuya Yanagisawa, and Hiroshi Amitsuka: J. Phys. Soc. Jpn. 87, 033702 (2018).



Category: Research | Static URL: /research/UNi4B.htm|



Present Member



   
Jマテリアル強相関物性 研究室

2019年度(令和元年度/平成31年度)メンバー

   
教授
准教授
助教
D2
D1
M2
M1
B4


---------- Staff ----------

Amitsuka  

教授 Professor
網塚 浩
(AMITSUKA Hiroshi)
Department of Physics, Hokkaido University
Room: 5-1-32, Tel.: 011-706-3484
E-mail: amiami(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

専門: 低温磁性

自分を元素に例えると:94 Pu (プルトニウム)

Yanagiaswa  

准教授 Associate Professor(Since 2012)
柳澤 達也
(YANAGISAWA Tatsuya)
Department of Physics, Hokkaido University
Room: 5-1-30, Tel.: 011-706-4422
E-mail: tatsuya(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

専門:超音波電子物性

Home Page

自分を元素に例えると:12 Mg (マグネシウム)

Hidaka  

助教 Assistant Professor (since 2007)
日高 宏之
(HIDAKA Hiroyuki)
Department of Physics, Hokkaido University
Room: 2-2-10, Tel.: 011-706-3558
E-mail: hidaka(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

専門:高圧下物性測定

自分を元素に例えると:1 H2 (水素)

watanabe  

技術補佐員 Office Administrator
渡辺 陽子
(WATANABE Yoko)
Department of Physics, Hokkaido University
Room: 5-1-32, Tel.: 011-706-3484
E-mail: wtnb(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

新学術領域JPhysics事務担当

自分を元素に例えると: ()

 

---------- Graduate Student ----------

koriki  

博士2年 D2
髙力 暁成
(KORIKI Akinari)
Room: 2-2-10, Tel.: 011-706-3583
E-mail:johann(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

研究内容:電流下磁化測定にもとづいたCeRu2Al10の真の対称性の探索 / RMn2X2系の単結晶育成

自分を元素に例えると:20 Ca (カルシウム)

kon  

修士2年 M2
今 布咲子
(KON Fusako)
Room: 2-2-10, Tel.: 011-706-3558
E-mail:23kon(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

研究内容:奇パリティ結晶場が与える5f電子への影響(UIr2Ge2) / 奇パリティ磁気多極子系での電流誘起磁化の測定(UCu5In)

自分を元素に例えると:6 C(炭素)

mikami  

修士2年 M2
三上 義人
(MIKAMI Yoshito)
Room: 2-2-05, Tel.: 011-706-3558
E-mail:my8517(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

研究内容:CeRh2Si2の電流下・パルス磁場下・圧力下における弾性応答の研究 / 超音波によるURu2Si2の隠れた秩序の研究

自分を元素に例えると:9 F(フッ素)

murata  

修士2年 M2
村田 怜也
(MURATA Ryoya)
Room: 2-2-10, Tel.: 011-706-3558
E-mail:ryoryo(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

研究内容:放射光実験によるUNi4Bの特異な電気磁気効果現象の研究 / ひずみゲージによる熱膨張測定システムの構築と改良

自分を元素に例えると:37 Rb(ルビジウム)

kaneko  

修士1年 M1
金子 佑真
(KANEKO Yuma)
Room: 2-2-10, Tel.: 011-706-3558
E-mail:yuma1113(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:17 Cl(塩素)

hibino  

修士1年 M1
日比野 瑠央
(HIBINO Ruo)
Room: 2-2-05, Tel.: 011-706-3558
E-mail:r-hibino(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:25 Mn(マンガン)

hayasaka  

修士1年 M1
早坂 英海
(HAYASAKA Eikai)
Room: 2-2-10, Tel.: 011-706-3558
E-mail:eikai(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:7 N(窒素)

miura  

修士1年 M1
三浦 紘大
(MIURA Kodai)
Room: , Tel.: 011-706-####
E-mail:kodai(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:29 Cu(銅)

 

---------- Undergraduate Student ----------

mikli  

学部4年 B4
御栗 丈⻁
(MIKURI Taketora)
Room: , Tel.: 011-706-####
E-mail:mikuri(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:58 Ce(セリウム)

itoh  

学部4年 B4
伊藤 圭吾
()
Room: , Tel.: 011-706-####
E-mail:keigo716(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:# #(##)

yanagiya  

学部4年 B4
柳⾕ 駿
(YANAGIYA Shun)
Room: , Tel.: 011-706-####
E-mail:giya(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:10 Ne(ネオン)

ushida  

学部4年 B4
⽜田 啓太
(USHIDA Keita)
Room: , Tel.: 011-706-####
E-mail:k-ushida(atmark)phys.sci.hokudai.ac.jp

自分を元素に例えると:26 Fe(鉄)

kurisaki  

学部4年 B4
栗崎 龍之介
(KURISAKI Ryunosuke)
Room: , Tel.: 011-706-####
E-mail:

自分を元素に例えると:2 He(ヘリウム)


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