スピン波理論の新しい展開―1次元そして0次元へ―

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電子系の励起には,電荷励起(電荷分布の揺らぎ),磁気励起(スピンの揺らぎ)と2つのモードがあります。電荷励起のエネルギーは有限である一方,磁気励起の最低エネルギーは零と信じられてきました。その『常識』がホールデインの衝撃的な論文によって覆され,今では磁気励起におけるエネルギー・ギャップ(スピン・ギャップ)は,現代物理学の主要テーマとなっています。

このような新しい視点・興味のもと,反強磁性的ギャップ励起と強磁性的ギャップレス励起が共存・競合するフェリ磁性体の研究も,近年格段に進展しています。こうした多彩な磁気励起を記述するため,スピン波理論,シュウィンガー・ボゾン表示,スピンレス・フェルミオン表示など,多岐にわたる解析手法の展開と応用を手掛けています。Blochの強磁性体研究(1930年)に始まるスピン波理論は,半世紀以上もの間,低次元系ではおよそ無力であると信じられてきました。しかし近年,修正スピン波理論が提出され,1次元あるいは0次元(単分子磁石)でも快進撃を遂げています。

数式の美しさ・神秘性に魅せられた人には,夢多き旅路が待っています。本専攻の低温物理学研究室では,これら低次元量子磁性体の核磁気共鳴研究が行われており,理論と実験の実り多き共同研究が実現しています。