有機高分子の光学観測と光制御

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炭素のπ電子が電気伝導を担う有機導体は,軽量性・軟加工性などの観点から,機能性材料としての期待も膨らみます。2000年には,導電性ポリアセチレン―電気を流すプラスティック―の研究で,筑波大学名誉教授・白川英樹博士にノーベル賞が授与されました。

有機導体では,電気化学ドーピングという手法でバンド・フィリング―電子の数―を柔軟にコントロールすることができます。例えばバンドに電子が1/4だけ充填されている状況では、電荷とスピンの分布が同時に波打つ電荷密度波(CDW)・スピン密度波(SDW)共存状態が実現します。化学置換・温度・圧力などさまざまな内的・外的因子を調節することにより,この密度波状態はまるで万華鏡を覗くように変化します。

しかしこうした微視的状態を『観る』こと、さらに進んで『制御』することは、簡単ではありません。その切り札として、『光』に注目します。光学異性体に学ぶように、化学式やエネルギーが縮退していても、時に光は状態の違いを区別することができます。また光照射によって、ドミノ倒しのように巨視的状態変化―光誘起相転移―を起こすことも可能です。このようなドラマの理論的シナリオを描くことは、スリリングで胸躍る作業です。