光物性物理学研究分野
我々の目標は、物質の光励起状態およびその緩和過程とそれに関連する光非線形現象の解明です。種々のレーザー装置を用いて,半導体,低次元スピン系,溶液やガラス等の極低温における光励起状態の基礎的物性などを研究しています。 最近は主に種々の半導体ナノ粒子を作成し、その内部のエネルギー状態の解明や、発光ダイナミクス、電子間相互作用、電子格子相互作用、電子や正孔のスピンダイナミクスなどを短パルスレーザーを用いて調べています。



鉛ハライドペロブスカイトナノ結晶の発光ダイナミクス
鉛ハライドペロブスカイトは有機無機ハイブリッド型と呼ばれるタイプと完全無機型と呼ばれるタイプの2種類があり、前者は非常に長いキャリア寿命と高い量子効率を利用して太陽電池としての応用が盛んに研究されています。一方、後者の完全無機型は太陽電池としての特性はそこまで良くないものの、簡単な製造方法で非常に高い量子効率を示すことはハイブリッド型と共通であり、発光材料としての応用が期待されています。ところが、これらの物質が非常に高い特性を示す根本的な原因についてはまだよくわかっていない部分がたくさんあります。これらを解明することはこれらの物質を応用する上で重要であるだけでなく、物性物理学の問題として非常に興味深い点が多くあります。我々は10nmサイズのセシウム系無機鉛ペロブスカイトナノ結晶を作成し、その短パルスレーザーに対する応答を観測することで、内部の電子状態やエネルギー緩和のメカニズムを研究しています。

帯電した酸化亜鉛の吸収発光特性
酸化亜鉛や酸化チタンは光触媒の材料としてすでに応用が進んでいますが、光触媒特性をうまく利用すると、数nmの半導体ナノ結晶中に、数個から数100個の電子を閉じ込めた状態を作成することができます。小さなナノ結晶にたくさんの電子を閉じ込めると、電子間の相互作用は非常に複雑となり、簡単な解析では予想できないような新規な物理現象が観測されると期待されています。我々は2〜6nm程度の小さな酸化亜鉛ナノ結晶を作成し、無酸素下での紫外線照射により電子を閉じ込めた状態を作って、その状態の光応答を調べています。

鉛ハライドペロブスカイト単結晶の発光特性
鉛ハライドペロブスカイト結晶の高い光学特性の原因の一つとしてラシュバ効果というものが提案されています。ラシュバ効果とは、結晶の反転対称性の破れから強いスピン軌道相互作用が働き、そのために鉛ハライドペロブスカイトが直接遷移半導体であるにもかかわらず、あたかも間接遷移半導体であるかのように振る舞い、それが原因で長いキャリア寿命が実現しているという提案です。低温で単結晶の発光スペクトルを観測すると、複雑なスペクトルが観測されますが、その中にラシュバ効果をうけた励起子の発光とされるものがあります。我々は、この発光の振る舞いを詳しく調べることで、鉛ペロブスカイト半導体の高い光学特性の原因を明らかにできると考え、単結晶の育成も含めて研究を進めています。
