成果報告会 アブストラクト
物理コースの発表
2年生早期配属(1)- 素粒子論 -
- タイトル:光学現象の電磁気
- アブストラクト:素粒子研に早期配属されたものの、素粒子について学んでいくためには相対性理論・量子力学・その他
多くの領域を習得しておく必要があった。それらのものを短期間に習得することは事実上不可能であり、習得せぬままに素粒子について
学ぼうとすると表面上の調べ学習になってしまい、本当の意味での学習になりえない。そこで自分たちは素粒子の研究上のテーマの
1つである“理論を統一していく”という部分に目をつけ、その第一歩である、現象を異なる分野から考察する力を養っていこうと
考えた。そのため高校以前の学習では波動で扱われてきた光学現象を、電磁気の分野から考察することにした。主な学習内容は
2つあり、1つは“なぜ可視光領域では波長が短いほど屈折率が大きくなるのか?”ということを分子の運動方程式・分子の分極に
とって得られる式・Maxwell方程式の3つの観点から考察していくものである。もう1つは、“光の反射の現象の入射角による影響”を
導体内での電場の減衰振動から導かれる反射係数と、電場による分子振動の観点からの説明を用いて考察する。
2年生早期配属(2) - 宇宙物理 -
- タイトル:宇宙の現在、過去、未来
- アブストラクト: 今回、宇宙の膨張、ビッグバン理論、ダークマターとダークエネルギーの三つの内容について発表する。
宇宙膨張については、主にフリードマン方程式とハッブルの法則の発見について説明する。ハッブルの観測によって「すべての
銀河は距離に比例してわれわれから遠ざかっている」ことが確かめられることで、宇宙は膨張または収縮するという理論的な
予測(フリードマン方程式)が正しいと確認されたという流れで発表を行う。ビッグバン理論については、ビッグバン理論とは
どのようなものか、何故ビッグバン理論が支持されているのかについて説明する。ビッグバン理論はいくつかの理論と観測が一致する
ため支持されているが、その例の一部を紹介する。ダークマターとダークエネルギーについては、どのようにしてそのような存在が
仮定されるに至ったか、また、それらの存在は宇宙の振る舞いにどのような影響を及ぼしているかについて説明する。
2年生早期配属(3) - 原子核理論 -
- タイトル:VPythonによる、電子の波動関数の時間発展シミュレーション
- アブストラクト:一次元上での電子についての時間依存するシュレディンガー方程式を、数値解析を用いて計算し、可視化
しました。数値解析にはVPythonというネット上で公開されたフリーのプログラムを用いました。今回は運動エネルギーが
一定の条件の下で矩形のポテンシャルに入射させ、ポテンシャルの値に応じて波動関数の反射・透過の割合がどの程度変化する
かをまとめ、発表します。
2年生早期配属(4) - 原子核理論 -
- タイトル:量子力学の解釈問題について(多世界解釈論者の視点から)
- アブストラクト:量子力学では、この自然界をどのような枠組みで捕らえるべきなのかという議論を量子力学の解釈問題という。
そして量子力学の誕生以来、さまざまな理論、つまり解釈論が展開されたが、今日中心に説明するのは「多世界解釈」というもの
である。これは量子力学をミクロの世界の理論として限定せず、日常の世界、ひいては全宇宙にまで広げて考えたとき、量子力学は
どのように解釈されるべきかという観点から導かれた考え方である。今現在主流であるコペンハーゲン解釈との対比でこの多世界解釈とは
どのようなものかというものを考えてみる。
2年生早期配属(5) - 物性理論T -
- タイトル:量子統計力学とBose-Einstein凝縮
- アブストラクト:物性理論Iグループでは、古典統計力学のマクスウェル速度分布についてその導出と検証を行った。N粒子理想気体に
ついて、まず、統計力学的エントロピーの定義とその性質を確認し、次にそれを用いてマクスウェル速度分布の導出を行った。最後に、
剛体球分子が十分希薄であると考えられる状態を想定し、イベント・ドリブン法を用いた数値計算により、速度の分布がマクスウェル
速度分布に緩和されることを確認した。
2年生早期配属(6) - 物性理論U -
- タイトル:量子統計力学とBose-Einstein凝縮
- アブストラクト:統計力学とは系の微視的な物理法則を基に、巨視的な性質を導き出すための学問である。巨視的な状態量は
微視的な物理量の平均値として得られる。統計力学の目的は、こうした平均操作をおこなう系統的・統一的な方法を与えることで
ある。こうした平均操作は、微視的な量から巨視的な状態量を導くものであり、統計力学は微視的な物質の理論と巨視的な熱力学とを
結びつけるものである。量子力学とは古典力学で説明しきれない電子や原子核などの間の微視的現象を説明するために作られた理論で
ある。古典力学に従えば初期条件によってその後の運動を完全に記述することができる。しかし、原子や電子などの非常に小さな
スケールの現象を扱う場合、不確定性原理により粒子の位置と運動量を両方を正確に測定することはできない。量子統計力学は
一体問題である量子力学と多体問題である統計力学を合わせた学問で、量子力学的な多粒子からなる巨視的な系を扱う理論である。
量子統計力学の結果として粒子をボーズ粒子とフェルミ粒子の2つに分類することができる。これらの粒子はある条件のもとで特殊な
現象を示す。例としてBose-Einstein凝縮を紹介する。
オープンラボ
- タイトル:なぜMilky Crownはできるのか?
- アブストラクト:今冬から新たに理数応援の一環で取り組んでいる、Open Laboratoryについての紹介を行います。
2年生1名、1年生4名の計5名からなるグループです。本ゼミで与えられているテーマは、液体の表面上に滴が滴下された時に
形成される冠状の構造「ミルキークラウン」の形成の原因を突き止めることです。非常に身近な現象で誰でも作り出せるもの
ですが、実は現在でも完璧な理解・再現には至っていません。現在私達はこの現象を扱うのに必要な知識を身につけている
段階です。そのため今回はミルキークラウンの過去に為された研究の紹介と、今後の研究の方針について発表します。
3年生自主研究
- タイトル:C言語を用いた物理系シミュレーション
- アブストラクト:C言語を用いてプログラムを作成し、次の3つの物理系の運動についてシミュレーションを行う。
[1. 振り子] 非常に基本的な物理系である振り子の運動のシミュレーションを行う。復元力が?(g/l) sinθ (近似なし) の系と、振れ角θ が
十分小さいときにsinθ ? θ と近似した系(調和振動子:¨θ = ?(g/l)θ) の違いを視覚的にとらえる。
2. 二重振り子
解析的には解くことが困難であり、非常に複雑な運動を行う二重振り子について様々な初期条
件の下でシミュレーションする。
3. 重力場中の物体の運動
Einstein 方程式の解の一つである球対称のSchwartzschild 解を用いて、相対論的効果を考慮した
重力場中の物体の運動を取り扱う。Schwartzschild 解によると、Schwartzschild 半径(rg = 2GM/c2 )まで物体が近づいたとき、物体外の(静止)座標系からは物体は止まって見える(v(t) = 0 となる) ことが帰結される。この現象を太陽を重力源としてシミュレーションする。
数学コースの発表
1年生幾何グループ
- タイトル:曲線・曲面と超曲面の微分幾何学的考察
- アブストラクト:今回の教科書「曲線と曲面-微分幾何的アプローチ-」では,初めに曲線の微分幾何が論じられ,次いで
曲面の微分幾何が論じられる.発表の前半部分では曲線や曲面の曲率などを定義し,面白い性質を持つ曲線や曲面の具体例を
提示する.その後私は「曲面論は直接的にR^(n+1)のn次元超曲面に一般化されるはずだ」と考え,その観点で曲面論および
平面曲線論を整理してみた.これらは外部にユークリッド空間が必要であり「外在的」あるいは「古典的」な理論である.
一般的なコースは曲面論の後いきなり「リーマン幾何」などの内在的微分幾何に進むのだが,こちらは抽象的であり一見した
だけでは分かりにくい.ここで古典的微分幾何とリーマン幾何との対応関係を意識するのは効果的だが,一般にリーマン幾何は
n次元リーマン多様体を扱うので,曲面論をまずn次元に一般化しておくとリーマン幾何との対応関係がより明確になる.発表の
終盤はこの話である.
2年生代数グループ
- タイトル:シローの定理について
- アブストラクト:私たちのグループは,代数概論(森田康夫著,裳華房)を用いてセミナーを行った。まず,行列に関する
簡単な復習,基本的な事項の定義とその例,基本的な性質(例えば,準同形定理など)を勉強した。その後,群論の勉強に入り,
それを一通り終えた。群論の勉強におけるハイライトとしては,”Sylowの定理”や”有限abelian群の基本定理”や”Schreierの
細分定理”などが挙げられる。そこで今回の発表では,有限群の構造定理の中で非常に強力な定理の中の一つであるSylowの定理を
紹介する。これは,有限群の位数がその構造に影響を与えていることを示している。
2年生整数論グループ
- タイトル:フェルマーの小定理の紹介
- アブストラクト:私たちのグループは『整数論』(斎藤秀司著、共立出版)をテキストとしてセミナーを行っている。まず
群、環、体と剰余群、剰余環に関する基本事項について学び、その後ガウス(Gauss)によって証明された平方剰余の相互法則を
頂点とする初等整数論を学習した。続いて体の2次拡大、4元数環を定義し、その性質を調べた。その後、有理整数環を部分環と
するp進整数環を定義、p進整数環を部分環、有理数体を部分体とするp進数体を定義し、現在はこれらに関する定理を学んでいる。
今回の発表では、初等整数論の中の定理の1つであるフェルマー(Fermat)の小定理を紹介する。これは、「aを整数、pを素数、
aとpの最大公約数が1であるとする。このとき、a^(p-1)をpで割ると余りが1となる」という定理である。この定理はオイラー
(Euler)の定理の系として与えられる。
2年生フーリエ解析グループ
- タイトル:ポアソン方程式について
- アブストラクト:私たちのグループは、中村周著「フーリエ解析」を使ってゼミをしました。フーリエ級数展開とその性質と
応用、そして、1変数や多変数のフーリエ変換、更に、超関数について勉強しました。フーリエ級数展開に関しては、一様収束や
平均収束、関数の空間の内積と直交関数系を学びました。また、フーリエ級数の微分や、偏微分方程式への応用として、熱方程式や
ディリクレ問題を解き、積のフーリエ級数展開とたたみこみの公式を証明しました。1変数のフーリエ変換については、反転公式や
プランシェレルの定理、リーマン・ルベーグの定理を証明し、フーリエ変換の平行移動や微分、たたみこみについて勉強しました。
応用として、R上の熱方程式、半平面のディリクレ問題、波動方程式を解きました。多変数のフーリエ変換については、多重指数を
使って、1変数のフーリエ変換の性質と多変数のフーリエ変換の性質がほぼ同じであることを確かめました。また、量子力学の定式化への
応用を学習し、フーリエ変数ξは運動量であるなどのフーリエ変換との関係性について学びました。超関数については、その定義と
性質、収束について学習しました。今回は、フーリエ変換を使って、電磁気学でよく使われる「ポアソン方程式」について発表しようと
思います。
3年生(1)
- タイトル:ローレンツ変換とその物理的帰結
- アブストラクト:1880年代に行われたマイケルソン・モーレーの実験から光の速さは進行方向に依存しないことが
確かめられ、これまでの理論と矛盾した結果が得られた。そこで1895年、ローレンツが運動している物体は縮んでしまうと
いうフィツジェラルド収縮という解釈を発表し、そこから更に2つの慣性系を結びつける線形変換であるローレンツ変換を
考えた。そして1905年に、アインシュタインはローレンツらの理論をより洗練した形として特殊相対性理論を発表した。
今回の発表では光速度不変の法則、相対性原理などの簡単な仮定から実際にローレンツ変換を導出することを目標とする。
さらに、そこから導くことのできるフィツジェラルド収縮や運動による時間の遅れの現象などについても説明したい。
3年生(2)
- タイトル:ホモロジーとドラムコホモロジーから見る空間の穴
- アブストラクト:R^2から原点中心の円板をくり抜くとそこには"穴"ができる。この"穴"のあいた空間の
ホモロジー・ドラムコホモロジーを調べることで、両者の関係や代数と幾何とが絡み合う様子を見てみたい。
余裕があれば、オイラー数や写像度などとホモロジー・ドラムコホモロジーがどのような関係式を持っているかに
ついて触れる。微分積分の基本とGreenの定理程度を知っていれば十分に話は分かると思われるので楽な姿勢で
聴いていただきたい。