成果報告会 アブストラクト

基礎ゼミ

相対性理論グループ
タイトル:シュワルツシルト時空とブラックホール
アブストラクト:われわれ相対性理論ゼミは1年間かけてSchutzの相対性理論を読んできました。その中で、今回は簡単に調 べることのできる静的な球対称(シュワルツシルト時空)の性質を紹介したいと思います。一般相対性理論では重力は力ではなく 時空の歪みとして捉え、その歪みの効果をメトリックという空間の距離を表す数学的な道具に押し付けます。まずは、静的で球対 称という時空の対称性を利用して線素がどのようにかけるのかを簡単に説明し、Einstein方程式の外部解を求めることでシュワル ツシルト・メトリックを導出する。その後このメトリックを利用してこの時空の性質を見ていくが、まずは粒子や光子をブラック ホールに落とす時にどのような軌道を描くのかを調べる。その結果として有名な近日点移動や重力による光の屈折(重力レンズ) が導かれるが、この2つの効果はシミュレーションを行って視覚的に見ていく。次に、時空の赤道面での光子の運動を調べ、光子 が脱出することのできない面(事象の地平面)の存在を示す。今回の発表ではテンソルなどの数学的な道具はあまり表に出さずに、 初等的な解析学だけで理解できるように心がけた。従って、あまり数学的なことは気にせずに気軽に聞いてほしい。
代数グループ(1)
タイトル:群論における基本的定理としてのラグランジュの定理
アブストラクト:群論において、特に有限群を考えれば、部分群との位数との関係を与えるラグランジュの定理は基本的であり、 重要である。今回の発表では、群論における基本的な概念として部分群、コセット分解等を紹介し、ラグランジュの定理を簡単にで はあるが証明する。
代数グループ(2)
タイトル:イデアルの起源と整数論
アブストラクト:環論の重要な概念であるイデアルについて、その起源と応用を述べる。クンマー(Kummer)はフェルマーの最終 定理の研究を進めていた際、代数的整数の範囲では素因数分解の一意性が成り立たないという困難に直面したが、その困難を「理想 数」というものを考案することで乗り越えた。この理想数の理論をもとに、デデキント(Dedekind)はイデアルを定義し、代数体の整 数環で「素イデアル分解の一意性」が成り立つことを示した。発表の最後では、実際にZ√-5という環におけるイデアルを素イデアル に分解してみる。
集合と位相グループ
タイトル:ベルンシュタインの定理
アブストラクト:私たちの班は、「集合と位相」をテーマにしました。教科書は「集合と位相」(小林貞一著 培風館)を使い、 集合と写像、濃度、順序集合という順に進めました。集合と写像では単射、全射、集合族といった基本的なことや同値関係、同値類 についても学び、順序集合では集合の元に順序という関係を定義したり、順序同型といった重要な概念を学びました。今回発表する のは集合の濃度の章に出てくるベルンシュタインの定理です。
海外研修
タイトル:すばる望遠鏡研修 研修報告
アブストラクト:2011年度前期理数応援プロジェクトの一環として行われたすばる望遠鏡研修に参加した。6月から約三か月間 ゼミを行い、9月下旬にアメリカ合衆国ハワイ州にあるすばる望遠鏡とその観測所を実際に訪問した。現地では本物の望遠鏡の見学 の他に、山麓のハワイ観測所の見学、現地のスタッフの方々の研究内容についての講義、自分たちですばるのアーカイブデータを用 いて行った解析についての発表など、さまざまな体験をすることができた。今回の成果発表会では、すばる望遠鏡の紹介を含めた現 地での研修内容の報告と、現地で自分が行った発表の紹介をする。発表のテーマは、「NGC253におけるHU領域の分布」である。す ばる望遠鏡で実際とられたデータを解析し、電離水素領域(HU領域)の分布について調べた。HU領域の分布にいくつかの特徴があ ると考えることができたため、その結果について自分なりに考察した。その内容を発表する。

理論系早期研究室配属

素粒子論研究室
タイトル:プラズマのドリフトと消えたコンデンサの電荷
アブストラクト:プラズマ物理学で知られている現象の一つにドリフトというものがある。これは(正確な説明では無いが) 一様な電場、磁場中でプラズマ全体が一方向に移動してゆく、という現象である。これをプラズマと一緒に移動する系から観測 すると興味深い疑問が湧いてくる。仮に当初の電場をコンデンサによって生みだしていたと設定すると、プラズマと共に運動す る系では電場が消えてしまうのである。果たしてこれは、プラズマと共に運動する系ではコンデンサに蓄えられていた電荷が消 えてしまった、ということなのだろうか。今回プラズマを持ちだしたのはこの疑問の導出のためであり、実際にはプラズマを構 成する荷電粒子のひとつを考える。静止系と、それに対して等速で運動している系での電場の見え方の違いを、特殊相対性理論 を用いて解き明かしてゆく。
宇宙物理研究室
タイトル:宇宙マイクロ波背景放射から探るビッグバン宇宙モデル
アブストラクト:20世紀にはいってからの宇宙論の進歩は目覚ましいものがある。1920年代にハッブルによる銀河の 赤方偏移の分析から、宇宙空間は絶えず膨張していることがわかった。これにより、宇宙はビッグバン宇宙論と定常宇宙論とい う相反する二つのモデル化がなされ、論争を引き起こす。宇宙マイクロ波背景放射の発見はこの論争に一応の終止符を打ち、ビ ッグバン宇宙論を優位にするものであった。今日の報告会では、ハッブルの法則から許される二つの宇宙モデルを紹介し、宇宙 背景放射の発見がなぜビッグバン宇宙論を支持するのかについて論じる。
物性理論研究室
タイトル:Bose--Einstein凝縮
アブストラクト:物性理論の早期配属グループでは超流動をテーマにした。超流動が起こる例としてはヘリウム4がある。 しかし、ヘリウム4の超流動は現在も完全には理論的に解明されておらず、さらに場の理論が必要であるため、それを学習する ことは非常に困難である。そこで、超流動がBose粒子系特有の現象であることから、理想Bose粒子系を調べることにした。まず 熱力学の確率論的な拡張として統計力学を学び、分配関数を導出、さらに分配関数からBose分布関数を導出した。そこから理想 Bose気体がある温度以下になるとBose--Einstein凝縮(BEC)が起こることを学び、さらに化学ポテンシャルと温度の関係から数値 計算を行い、転移点を確認した。

オープンラボ

プロジェクトチーム1
タイトル:ミルククラウンの構造、及びその成因に関する研究
アブストラクト:ミルククラウンとは、液滴が落下して液面に衝突した際に形成される、縁に複数の指状突起を備えた お椀状の構造である。比較的古くから研究者による興味の対象となってきた現象だが、近年では流体の数値解析手法の有効性を 測る尺度となる現象としても関心が持たれている。しかし、多くのグループがこの現象に対する数値シミュレーションを 行っているものの、構造を忠実に再現出来たものは我々の知る限りでは存在しない。本グループの目的は、高速度カメラを いてこの現象の形成過程を具に観察し、定量的な解析を通してミルククラウンの構造及び成因を明らかにすることである。 今回の報告では、形成過程の観察と解析の結果を述べ、成因に関する力学的な説明を試みる。また、実験の過程で偶然発見 された、ミルククラウンの内部に滴を構成していた液体が形成する特徴的な帯状構造についても報告し、その成因に関する 考察も述べる。
プロジェクトチーム2
タイトル:ラマン分光法によるお酒のスペクトルとその相違
アブストラクト:別途記載
プロジェクトチーム3
タイトル:斜面を転がるボール−慣性モーメントを考慮した落下運動の考察
アブストラクト:別途記載
実験系早期研究室配属
タイトル:強誘電性Bi層状ペロフスカイト酸化物PbBi4Ti4O15のラマン散乱
アブストラクト:Bi層状ペロフスカイトは一般に(Bi2O2)2+(Am-1BmO3m+1)2-で表される物質群である。Bi2O2半導体層が擬ペロフスカイト構造を 挟んだ層状構造を持ち、mは擬ペロフスカイトの層数を示す。Bi層状ペロフスカイト物質の多くは強誘電性を示し、分極反転に対して優れた 疲労耐性や圧電性を示すことから、強誘電体メモリー(FeRAM)や圧電センサーへの応用で注目されている。 層数がm=4でA=Pb, B=TiのPbBi4Ti4O15(PBT)は、Tc=843 Kで正方晶から斜方晶へ構造相転移を示す。空間群は高温側の 常誘電相でI4/mmm、低温側の強誘電相でA21amと報告されている。1994年、KojimaらによりPBTのラマン散乱実験が報告されているが、 強誘電性相転移の十分な機構の解明には至っていない。本研究では、PBTの強誘電性相転移の相転移ダイナミクスを調べるため、PBTセラミックス 試料を固相反応法で作製し、トリプルモノクロメータを用いたラマン散乱実験を行った。ラマンスペクトルの温度依存性は、転移点Tcにおいて強誘電性相 転移に伴うフォノン異常を示した。また他のBi層状ペロフスカイトと同様にTc以下の温度領域で中間相の存在を示唆する結果を得た。講演において 詳細を報告する。
卒業研究
タイトル:CaCu3Ti4O12(CCTO)の高温度領域における電気抵抗率測定のための実験装置製作及び測定
アブストラクト:別途記載