物理学専攻 凝縮系物理学講座 固体物性部門
強誘電体って?
図:ZnOの結晶構造:ZnOはウルツ鉱型構造(六方晶)で、NaCl型やせん亜鉛鉱型の[1 1 1] 方向を引き伸ばした構造。この方向に、Zn 金属層とO 絶縁層が交互に積み重なっている。対称中心がなく、構造的にはもともと強誘電性を示しても良い。
強誘電性半導体ZnOの発見
Liドープの役割はZnのd −電子を無くすることにより、重要な役割をしていたd-p混成の電子状態を変えることになります。特性を調べるとZnOはこれまでの強誘電体のメカニズムとは異なり、世界で初めての「電子性強誘電体」の可能性が大きいことが明らかになってきました。また、この結晶は良質の薄膜を作りやすいため、強誘電薄膜としての応用が期待されます。さらに、長距離力であるダイポール相互作用が主因の強誘電性を、薄膜化(2次元化)したときどうなるか?この新現象の研究にも最適な研究対象です。もちろん、強誘電性半導体という新分野の開拓も興味深いテーマです。
これからの展開
しかし最も注目すべきは、ZnOはレーザー光源、太陽電池、透明電極、光をスイチングできる強誘電体であるため、一つの基本材料で未来の「光IC」が可能になるのでは、という期待です。一方、このように多機能であることは、ちょっとした不純物などにより、性質が大きく変化するということを意味し、扱い難い物質です。この状況はゲルマニウムやシリコンの半導体研究の黎明期の様子と良く似ていて興味深く思えますが、基礎研究の進展に期待される課題であります。
1. 小野寺:「II-VI族半導体ZnOにおける新たな強誘電相」、
日本物理学会誌、53 (1998) p. 282
2. 小野寺、佐藤:「酸化亜鉛の強誘電性と次世代電子材料としての可能性」、
Materials Integration - Electronic Ceramics, 12 (1999 ) p.27.
3. 小野寺:「II-VI族半導体の強誘電性」、固体物理、35 (2000) p. 762