研究内容
重い電子系(Heavy Electron あるいは Heavy Fermion 系)の電子状態を中心に、 4f、5f 電子系の物性を研究しています。重い電子系とは、希土類の Ce、Pr、Yb やアクチノイドの U、Np 等を含む化合物において、結晶中を遍歴する電子の有効質量が、ふつう私達が知る銅や金などの「通常金属」の数百から千倍も重くなる物質群のことをいいます。この重い電子状態は、これらの元素がもつ 4f あるいは 5f 軌道に強く束縛された電子(局在 f 電子)が、結晶中を自由に動き回る伝導電子の状態と混ざりあう確率をもつこと(c-f 混成効果)によって起こります。「局在」と「自由」の両電子状態は直感的にもイメージしやすい(一体描像が描ける)電子の姿です。これに対し、重い電子状態は、f 電子が局在状態での個性を強く残しながらも結晶中を遍歴する強相関多体電子系であり、極低温領域において、常識を越えた様々な量子現象を引き起こします。このような電子状態は、1975 年に CeAl3 という物質において初めて確認され[1]、さらに 4 年後、CeCu2Si2で重い電子による超伝導[2]が発見されたことで、多くの研究者の関心を集めることとなりました。以来、研究の深まりとともに普遍的問題が洗い出されていくと同時に、今日も新物質、新奇物性が見出されており、その奥深さと可能性が研究者を魅了し続けています。私達の研究グループは、1987 年より f 電子系の実験研究を始め、微弱反強磁性、隠れた秩序、異方的超伝導、非フェルミ液体異常、四極子秩序、メタ磁性などのキーワードで表される諸問題に取り組んでいます。 [1] K. Andres, J.E. Graebner, and H. R. Ott, Phys. Rev. Lett. 35 (1975) 1979. [2] F. Steglich, J. Aarts, C.D. Bredl, W. Lieke, D. Meschede, W. Franz, and J. Schafer, Phys. Rev. Lett. 43 (1979) 1892. |
最近の研究から |
5f 電子系の磁性と超伝導 URu2Si2における隠れた秩序と微弱反強磁性 重い電子系超伝導体UPt3における極低温磁化測定 希薄ウラン系における局所的非フェルミ液体異常 4f 電子系の磁性と超伝導 TmM2Si2(M: 遷移金属)系の磁性 非フェルミ液体的振る舞いを示す YbRh2Si2 の極低温磁性 スクッテルダイト系超伝導体 PrOs4Sb12 の極低温磁性 |
研究手法 |
物質合成 テトラアーク炉を用いた単結晶の作成 プラズマジェット炉を用いた多結晶の作成 極低温基礎物性測定 キャパシタンス式極低温精密磁力計を用いた磁化測定 SQUID磁束計による磁化測定、交流磁化率測定 緩和法比熱測定 電気抵抗測定 超音波音速測定(弾性定数測定) 微視的測定 中性子散乱実験 ミュオンスピン回転・緩和・共鳴(muSR)実験 |
北海道大学 / 大学院理学研究科 / 物理学専攻
E-mail: amiami@phys.sci.hokudai.ac.jp