1. メ ン バ ー

 

  助教授 小野寺 彰  011-706-2680, onodera@phys.sci.hokudai.ac.jp

  MC2 : 沢田 拓也、 川村 祐子


2. 研 究 成 果


強誘電性半導体の解明

 

II-VI族半導体ZnO

 II-VI族半導体であるZnOのZnをLiで一部置換すると強誘電性を示すことを発見し 、そのメカニズムの解明を試みている。

 ZnOはウルツ鉱型の結晶構造をとり、もともとc 軸(極性軸)方向にPolar な結晶であるが、電場による分極反転は実現せず強誘電性を示さない。第一原理計算 によれば、ZnOの圧電特性は、Zn 3d とO 2p の混成が大きく関係している(A.D. Corso et al, Phys. Rev. B50 (1994) 10715)。 Liは3d 電子を持たないことから、 ZnのLi置換によりZn - O 結合電子状態が変化する。ZnOの強誘電性は、この電子構造の変化に起因する新し いタイプの強誘電性である可能性が大きい。誘電測定、比熱測定から 330 Kに誘電率や比熱の異常が見い出された。X線回折では、ZnOは通常の格子系の不安 定性を伴う強誘電体の相転移に比べ、構造変化が小さく空間群も変化しないことが明 らかになった。電子系のわずかな変化が相転移を誘起することを現象論的に提案して いる。今後、電子論的立場にたったより微視的な考察を進める予定である。(小野寺 、日本物理学会誌 53 (1998) 282)。

II-VI族半導体CdTe:M

  同じII-VI族半導体のCdTe:ZnもZnO:Liと同様に強誘電性を示す。CdTe:Znは閃 亜鉛鉱型の結晶であり、ZnO:Liと多少異なる点もあるが誘電的特性は良く似ており、 共通のメカニズムで強誘電性が生じている可能性が大きい。一方、閃亜鉛鉱型結晶を とるIV-VI族強誘電性半導体PbTe:Geとは誘電特性は大きく異なる。CdTe:ZnやZnO:Liは 、新たなモデルが必要とされる。CdTe:Zn、CdTe:Mnの比熱測定を行い、この系の類似 点、相違点の検討している。

強誘電性半導体の展望

  これらのII-VI族強誘電性半導体は薄膜化が容易であり、シリコン素子に機能性 薄膜として組み込むことが可能である。最近、ZnOは青色レーザーとしても注目されて おり、「光源」と「光と結合する機能性膜」をもった光ICデバイスへとつながる夢の 多い物質である。

 研究発表(1997年)