気まぐれ通信 2024年

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  • 9月 阪大・中辻直斗特任研究員(越野幹人教授研究室)が来室されました:
    中辻研究員は右から2人目。

    物理学会の最中、研究室にお立ち寄り
    いただき、今を時めくモアレ物性の
    理論研究についてお話いただく一方、
    我々の研究活動― 量子スピン液体、
    準結晶、 光誘起スウィッチング磁石、
    トポロジカル相転移、 修正スピン波
    理論など― についても猛烈な質問
    攻勢を受け、 昼食を囲んでなお、
    議論はエンドレスに続きました。

  • 9月 日本物理学会(北海道大学)で 山本が研究成果を発表しました:
      講 演 題 目 
    著 者
    Is the frustrated magnetic molecule {Mo72Fe30} a classical spin ball?
    山本昌司、大原潤
  • 8月 山本、井上の論文
          Magnon confinement on the two-dimensional Penrose lattice:
          Perpendicular-space analysis of the dynamic structure factor.
                 S. Yamamoto and T. Inoue:

                       Crystals 14, No. 8, 702, 1-26 (2024)
  • が出版され、 Feature Paper に選定されました。

     Shechtman博士の準結晶発見にノーベル賞が授与されて10年余り、実験分野では
    さまざまな合金準結晶から2次元準周期光格子まで、多彩な舞台構築が進んでいます。
    ここでは、Penrose格子Heisenberg反強磁性体=2次元準周期格子磁性体の
    非弾性中性子散乱スペクトルを理論計算して、(準結晶特有の) 補空間 で解析する
    というユニークなアプローチを取ります。

     粒子‐正孔対称遍歴系の零エネルギー閉じ込め状態は古くから知られていますが、
    Heisenberg反強磁性体にも類似する マグノン閉じ込め状態 を発見しました。
    似て非なるもの、反強磁性マグノンのそれは配位数3のサイトだけでできており、
    さらに面白いことに、 量子効果によりこの閉じ込め度合いがさらに進みます
    それはまるで、グループ内グループ、量子揺らぎにより、外に染み出すのではなく、
    中で細分化が進んでゆきます。オープン・アクセスですので、是非多くの方に、
    この目にも美しいヴァーチャル空間の芸術を楽しんでいただきたいと思います。


  • 4月 10th Annual Conference of AnalytiX [Nagoya/Japan]にて、
      Raman Observations of Majorana Spinons in Kitaev Spin Balls
    と題して、山本が招待講演を行いました。

     昨年の大阪に引き続いて今年は名古屋、物性解析analyticsの一言で現代科学を
    鷲掴みにするこの会議に、再度出席しました。招待当初はRaman spectroscopyの
    sessionが組まれ、それならばと講演を引き受けましたが、プログラムは二転三転、
    結局、Advances in Spectroscopy & Mass Spectrometryという、ごった煮のsessionで喋る
    ことになりました。前後を、X線構造解析(というより欧州の巨大共同実験施設の紹介)、
    タンパク質構造解析(というより米国の神経変性疾患に対する組織的新薬開発の現状)
    に囲まれ、如何様にでも対応できるように、量子スピン液体って何?から、
    ゲイジ拡張2重対称操作群の指標表まで、アマからプロまで各レヴェル、全てを
    打ち返せるように準備して、出掛けました。

     会場は想像通りケイアティックでしたが、座長のLauritsen教授が見識の高い
    [ベンゼン環(化学式)も群(数式)も同じ学問じゃないですか、あれやこれやが一同に
    会する醍醐味、それもカンファレンスの魅力じゃないですか、私は好きですよ、という]
    方で、違和感無く喋ることができました。勿論私も、名古屋と札幌の桜の開花時期の
    違いから入り、随所に小道具をちりばめて、聴衆の顔色を観ながら、話を進めました。
    蜂の巣格子におけるLoudon-Fleury(2次摂動)Ramanスペクトルの偏光依存消失機構、
    これと対比してのKitaevスピン・ボールの偏光依存解釈、これらを証明する数式延々の
    スライドを5枚ほど、遊び心で車窓の景色の如く流してみました。
    『みんな苦痛かもしれないけれど私は快感』と、コメントしながら。
    予想以上の爆笑をいただきました。

     座長ご自身もトップを切って研究を披露されたのですが、これが、およそ座長とは
    思えない(時計を気にされない)ロング・トークにエンドレス・ディスカションで、
    これで一気に、場の空気が緩んで(無政府化して)しまいました。私は、トーク本体は
    時間厳守、しかしディスカション・タイムはこの緩い空気を満喫して回答を続けました。
    激しい競合、全身武装、目を皿のようにして新ネタ探し、このような緊張感は良くも
    悪くも存在せず、お祭りを楽しんで帰路につきました。

     さて今夏今度は、Chernyshev教授も来日予定の磁性国際会議に参加予定で、こちらは
    専門家中の専門家と意見交換ができる、数理物理のacademic tasteを満喫できる、
    今から、それを楽しみにしています。

    会議当局の指示で、会場設置のコンピュータにファイルをコピーして講演。
    意図せずフォント、時に文字化け、が少々残念。しかし、face to faceの心地好さ
    が感じられる中規模セミナ室、それが立ち見の聴衆で後方ドアが閉まらないほどの
    満員御礼。専門を異にする方からいただいた質問は、物理、理論、数式に立ち入る
    遥か手前、概念的なものながら、これに丁寧に応える―2次元蜂の巣格子から
    Kitaev flakesを切り取って観るのはいかがでしょう、肝要は離散自由度、面白みは
    PSG積表現を使ってMajorana spinon pairを視覚化、ひいてはその1つ1つを
    同定できること、等々―中で、座長を始めあちこちから賛意、好意のコメント
    が相次ぎ、図らずも満場一致応援団と化した会場聴衆に笑顔を返す。


    Humorとwitに富み、
    mild personality
    そのままに穏やか
    和やかなsession進行
    をしてくださった座長、
    南デンマーク大学の
    Frants Roager Lauritsen教授
    (触媒化学、質量分析)と
    session終了後に。

    同一sessionで共に講演。
    欧州の高エネルギー線源
    共同利用施設Extreme Light
    Infrastructure (ELI ERIC)
    のAnna Zymakova博士
    ( X線構造解析)と
    休憩時間にエール交換。


  • 2月 CEMS Symposium on Emergent Quantum Materials 2024
    (秋葉原)で田所が研究成果をポスター発表しました:
     講 演 題 目 
    著 者
    Photoinduced topological phase transitions in Kitaev spin nanoribbons
    R. Tadokoro, S. Yamamoto
  • 理研・古崎研究室・特別研究員の山崎さんと話が弾み、
    高まる研究闘志を土産に、帰路につきました。

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