北海道大学 | 理学研究科 | 物理学専攻 | 物性理論
研究内容
我々が扱う物理系は,1023個という莫大な数の粒子が集まった系です。このような系では,相転移という,一粒子あるいは少数粒子の系では考えられない現象が起こります。身近な例では,水は0℃近傍で液体から固体,あるいは固体から液体に変化(相転移)し,その前後で全く異なる性質を示します。このような相転移の例は,金属中電子などの微視的世界から宇宙スケールの現象にわたって数多く見られ,現代物理学の中心的な研究テーマの一つとなっています。わが研究室では,この多彩な相転移現象の中から,特に磁性や超伝導・超流動など,量子力学に従う多粒子系の示す現象を研究テーマにしています。そして,グリーン関数などの量子統計力学の手法を駆使して,特に粒子間の相互作用の役割に焦点を置き,この多粒子系の理論的解明をめざしています。
- 遷移金属,ランタン族,アクチナイド族を含む合金のなかには,電子相関効果が顕著に現れる物質が数多くあります。準粒子の有効質量が電子の10倍から1000倍にもなる合金もあり,これらの物質群は「重い電子系」と呼ばれています。この重い電子系は,磁性・超伝導・金属・絶縁体など固体のあらゆる凝縮相を持ち,また電子相関効果のため非常に面白い性質を示し,新奇な物理現象の宝庫となっています。この重い電子系の示す性質の理論的解明を,実験系研究室との密接な連携の下に行っています。このテーマの中には,高温超伝導も重い電子系の示す奇妙な超伝導であるとの視点から,高温超伝導発現機構の理論的研究も含まれています。
- 電気が抵抗なく流れるという顕著な性質をもつ超伝導状態は,莫大な数の粒子がクーパー対という同じ二粒子束縛状態に落ち込むことにより生じ,基礎物理学の観点からも重要な研究テーマとなっています。その超伝導体には,磁場が侵入できない第一種超伝導体と,磁場の侵入が量子化された渦糸を伴って起こる第二種超伝導体があります。第二種超伝導体の渦糸状態は,渦の量子化,渦糸の格子形成・液体化などの面白い性質を示し,また大電流輸送や高磁場発生などの実用的観点からも重要です。渦糸が運動するときの性質(渦糸の動力学)の解明や,クーパー対が異方的な異方的超伝導・超流動体の渦糸状態などの理論的研究を行なっています。