北 孝文(KITA, Takafumi)
物理学専攻・助教授(物性理論)
研究内容とメッセージ | 連絡先 | 発表論文
現在は、量子渦の構造とその動力学の解明、および超伝導電磁流体力学の完成に向けた理論的研究を行っています。
空気・水など、通常の流体中を渦が運動すると、運動方向に垂直方向の力を受けます。この力は、「マグナス力」、あるいは「クッタ-ジューコフスキーの揚力」と呼ばれ、野球におけるカーブ等の変化球や飛行機浮揚の原因となっています。マグナス力は、古典流体力学の「ナビエ-ストークス方程式」に基づいて理論的に説明できます。
一方、巨視的量子流体である超伝導体中では、電流が電気抵抗なし(散逸なし)に持続することが知られています。また、渦度(磁束)に基本単位が存在し、渦の量子化が起こります。この量子渦が超伝導体中を運動し始めると、電場が生じ、電流の散逸が起こります。超伝導体中の量子渦の運動を解明することは、学術上のみならず、実用上からも非常に重要です。しかし、超伝導体中の量子渦の運動については、ほとんど未解明のままでした。この主な原因として、超伝導体においては、古典流体力学の「ナビエ-ストークス方程式」に対応する方程式が、未確立であったことが挙げられます。
一般に流体力学の方程式は、より微視的な輸送方程式から導かれます。私は最近、「ゲージ不変性」という輸送方程式の持つべき基本的性質に着目して、多体効果や外場の周波数依存性も考慮した輸送方程式の系統的・包括的研究を行いました。そして、ホール項・ゲージ不変性を持った超伝導状態の輸送方程式を導出することに初めて成功しました。現在、この輸送方程式を用いて、量子渦の動力学を解明することを試みています。この他の研究テーマとしては、秩序変数が複数ある場合の量子渦構造の理論的解明や、第二種超伝導体の準粒子状態と量子振動の解明があります。
台風・竜巻・渦潮・銀河星雲など,渦は,われわれの身のまわりから宇宙スケールに至るまで,自然界の安定構造として多種多様に存在します。カルマン渦列は,自然の作った芸術作品と呼べましょうか。渦は古来,人々の想像力を刺激しました。シチリア島とイタリア本土間のメッシーナ海峡に発生する渦潮は,3000年の昔,『カリブディス』という怪物として船人に恐れられた。『オデュッセイア』には,彼がトロイア戦争からの帰路,この難所を命からがら通過したことが記されています。あるいは,『オズの魔法使い』のドロシーは,愛犬トトと共に、竜巻に乗って魔法の国にたどり着きます。量子渦の世界も、これらに勝るとも劣らず、多彩で驚きに満ちあふれています。この分野の研究は、尽きない興味と感動を与えてくれるでしょう。
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2003年5月5日改訂