Colloquium @ Division of Physics, Hokkaido University
Colloquium, 2000
Division of Physics, Grad. Sch. of Sci., Hokkaido Univ.

以下のように物理コロキュウムが予定されています。
皆さん奮って御参加下さい。

URL of this page is <http://phys.sci.hokudai.ac.jp/Colloq/Takeno2000.html>
Colloquium 1997 1998 1999 2000
  • 題目:
    Intrinsic localized modes in pure nonlinear lattices
    - intrinsic Josephson effects in high-Tc superconductors and base flipping in DNA -

  • 講師:
    武野 正三氏 (大阪工業大学情報科学科教授)

  • 日時・場所:
    平成 12 年 9 月 13 日(水)16:00-
    物理専攻 大学院講義室 (2-2-11)にて

  • 要旨: 固体や分子における素励起として原子やイオンの集団運動(波動、基準振動)が 存在する。 ここでの根底にあるのは原子、イオンのダイナミクスの線形性であり、 集団運動は独立なノーマルモードの集まりとして記述され、 その量子化は phonon という準粒子を与える。 このとき、系の非線形性は小さな摂動項とみなされ、 それは各モードのエネルギーシフトと damping を与えるということは周知の事実である。

    近年、系の非線形性が本質的な役割を果たすものの一つとして、 ソリトンが注目を浴びているが、 それは厳密に解ける系の場合(可積分系)と 孤立波と呼ばれる非線形波動を与える系(非可積分系)の場合に大別される。 前者の研究は近年数理科学の分野で大きな発展をもたらしたが、 物理的にみてその存在の measure はゼロであり、 後者の存在は殆どすべて空間1次元系の場合に限られ、 且つ格子系では通常連続体近似の下でのみ存在する。

    このコロキュウムでは系の非線形性とともにその構造の離散性(格子的構造)が 本質的な役割を果たす非線形系において、 非線形局在モード(intrinsic localized modes)というものが、普遍的な形で 存在することを述べる。 このことは、線形近似の下での格子振動モードの振動数帯の外領域(禁止帯)に 系固有の非線形性により局在モードが発生し得ることを意味する。 不純物による局在モードと異なり、この局在モードは系の任意の場所に存在し得、 また、一般に任意個数存在し得る。可積分系におけるソリトンの場合と異なり、 非線形局在モードは非可積分系における well-defined モードとして、 永いが、有限の寿命を持っている。非線形局在モードは、 また、stationary (immobile) なものと mobile なものに大別出来るが、 少なくとも stationary な局在モードは系の次元性によらず、 その存在は普遍的であろうことを示すことができる。

    その発見より十年以上を経過したにもかかわらず、数多くの数値実験、 コンピューターシミュレーション以外に、現実の系でこの非線形局在モードが 実験的に観測されたことを示す例は極めて乏しい。 このコロキュウムでは、その存在を示す具体的な例を紹介する。 先ず、の超伝導層が c-軸方向に結合した Josephson junction の 積み重なりからなる系とみなされる BSCCO 系、 TBCCO 系等における Josephson 効果の I-V特性の場合を述べ、 つぎに、DNA における polymerase enzyme 等がもたらすDNA における flipping state の存在に非線形 局在モードが関与している可能性があることを示す。

  • 連絡先: 和田 宏 (x3517)


    物理コロキウム世話人:
    河本 充司 (x 4423) <atkawa@phys.sci.hokudai.ac.jp>
    大西 明 (x 2689) <ohnishi@nucl.sci.hokudai.ac.jp>