これまで、磁場は強磁性体に対して力を及ぼすことはあっても、生体や水、空気 など反磁性、常磁性物質などに対しては目に見える効果を及ぼすことはないと考える のが常識でした。しかし、超伝導磁石で得られる数テスラ以上の磁場を、水や空気、 粉末、その他色々なものにかけてみると様々なことが実は観測されます。たとえば、 磁場をかけると酸素の水中への溶解速度が速くなったり、水の蒸発速度も顕著に加速 されます。植物の生長方向が変化します。モーゼ効果は磁場で水表面が凹む現象で す。空気に磁場をかけて見かけの比重を大きくすると、ついには空気の上にアルキメ デス効果により水が浮くようになります。
ここ数年室温付近で磁場を溶液や粉体、植物など色々なものにかけてみた結果、 「効果は確かにある」、しかしながら、その効果は「遺伝子に影響を与えるといった ものではない」、むしろ、「重力を擬似的に変化させた環境が形成される」という形 で総括できると考えています。磁場は電磁波や光のような大きなエネルギーをもって いないので、その効果は原子・分子にダイレクトでなく、むしろ、マクロに作用するも のです。その意味は重力が原子や分子の反応に影響を与えないが、タワーから人が飛 び降りたらどうなるか、という問と似ています。そのような意味合いで、水や空気、 有機媒体などの液体や気体、あるいは粉末や粒子の関わるプロセスにとって、温度、 圧力に加えて、磁場はもう1つの有益な制御因子として使えそうであります。