物性談話会99
Division of Physics, Grad. Sch. of Sci., Hokkaido Univ.

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・題目:

II-VI族半導体ZnOの強誘電性

・講師:

小野寺 彰氏(固体物性研究室)
(by Akira Onodera)

・日時・場所:

6月4日(金) 13:00-14:00
大学院講義室(2-211)にて
[6/4 (Fri) 13:00-14:00 @ Lecture Room (2-211)]

・要旨: 

ZnOは大きな圧電性を示すII-VI族ワイドギャップ半導体である。最近、Li置換によ り強誘電性を示すこと[1]、青色レーザーの発振成功等で注目されている[2]。ZnO の比抵抗は、ストイキオメトリや不純物により、実に14桁ほどの変化を示すが、強誘 電性は絶縁体領域で見出されたものである。 ZnOは亜鉛金属層と酸素絶縁層が極性軸方向に交互に積みあげられた構造で、対 称中心がない。強誘電性を示しても良いが、分極反転には原子の大きな変位が必要で 、融点まで反転がみられない。そうならば、「ZnOのZnをイオン半径の小さいLiで置換し、オフ・センター・ イオンを入れると強誘電性を示すのでは?」 というのが我々の問題意識であった。   実験結果をみると、誘電率、自発分極の誘電特性が弱く、比熱や構造変化が小さ い。強誘電性の出現に伴う結晶の対称性にも変化がなく、オフ・センター・イオンに よる単純な構造論的なモデルではないと考えられる。むしろ、Zn3d電子とO2p電子 の混成[3]などの、電子系エネルギーの利得により相転移が誘起される「新しいタイ プの強誘電体」である可能性が大きい。ZnOが強誘電体になるメカニズムは良くわか っていないが、明らかになった点、問題点などを中心に御紹介したい。


参考文献

[1] 小野寺 彰 : 日本物理学会誌 53 (1998) 282.
[2] 川崎 雅司、大友 明:固体物理 33(1998)59.
[3] A. D. Corso et al. : Phys. Rev. B50 (1994) 10715.

 

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