物性談話会99
Division of Physics, Grad. Sch. of Sci., Hokkaido Univ.
URL of this page is <http://phys.sci.hokudai.ac.jp/BusseiColl99/oda.html>
・題目:
高温超伝導体のTcを決めるエネルギー・スケールと超伝導転移機構
・講師:
小田 研氏(高圧物理学研究室)
(by Migaku Oda)
・日時・場所:
11月26日(金) 13:00-14:00
大学院講義室(2-211)にて
[11/26 (Fri) 13:00-14:00 @ Lecture Room (2-211)]
・要旨:
高温超伝導体における電子系の性質は、Cu-O面内のキャリアー(ホール)濃度pと温度Tの関数として多彩に変化する。p=0の系(母結晶)はモット絶縁体の一種で、そのCuサイトに局在するスピンは室温付近で反強磁性秩序を示す。また、Cuスピン間の結合はCu-O面内の隣り合うサイト間で著しく強く、長距離秩序を示すTnよりかなり高温から2次元的な反強磁性スピン相関が発達している。この様な母結晶のCu-O面にホールをドープしていくと、反強磁性秩序は急速に抑制されてp~0.02で消失し、やがて(p~0.06から)超伝導が出現する。一方、反強磁性スピン相関は、pの増加と共に急速に抑制されるが、超伝導を示すホール濃度領域でもTcよりかなり高温のTmax(~Jeff)付近から低温に向かって徐々に発達していく。最近我々がSTM/STS等で調べたBi2212とLa214におけるTcより低温のいわゆる超伝導ギャップ2Doは、広いホール濃度領域でTmax(~Jeff)とほぼスケールしており、この結果は超伝導のpairing相互作用が磁気的なものであることを示しているように思われる。ところで、高温超伝導体のTcはあるホール濃度poで最大Tcmaxとなりその両側で単調に低下するという特徴を持つが、poより低ホール濃度(underdope)領域における超伝導転移の機構はpoより高ホール濃度(overdope)領域で見られるBCS的なものとは大きく異なることが最近明らかになってきた。また、underdope領域ではTcより高温から電子・磁気励起スペクトルに擬ギャップが出現することも知られており、その超伝導転移機構との関連性で最近ホットな話題となっている。擬ギャップとは、励起スペクトルの低エネルギー領域のウエイトが大きく落ち込むギャップ様構造で、高温超伝導体の擬ギャップは、Tcより低温のエネルギー・ギャップとほぼ同じサイズである。また、擬ギャップの発達が顕著となる温度T* (Tc<T*<Tmax)は、pの低下と共に単調に減少し、poより少し高ドープでTc-p曲線に連続的に繋がる。我々のBi2212とLa214の低温(T<<Tc)エネルギー・ギャップ2Doに関するSTM/STSの結果では、さらに、i) 2Doがpの低下と共にT*とほぼスケールして単調に増大すること(T*~Do/2)、ii) Tc~pDoという関係が成立し、高温超伝導体のTcを決めるエネルギー・スケールが~pDo (BCSの場合(Do))となることも明らかになった。セミナーでは、T*~Do/2およびTc~pDoとコンシステントと思われる擬ギャップ状態から超伝導状態への転移のメカニズムについても簡単に議論する(時間があれば)。
・連絡先: 物性談話会世話人(北) (x 2687) <kita@phys.sci.hokudai.ac.jp>