物性談話会98
Division of Physics, Grad. Sch. of Sci., Hokkaido Univ.

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・題目:

四重極転移における最近の話題

・講師:

榊原 俊郎氏(極低温研究室)
(by Toshiro Sakakibara)

・日時・場所:

6月12日(金) 13:00-14:00
大学院講義室(2-211)にて
[ 6/12 (Fri) 13:00-14:00 @ Lecture Room (2-211) ]

・要旨: 

4f、5f電子を含む強相関電子系の物理における中心課題は重い準粒子(フェルミ液体 )の形成とその基底状態で現れる異方的超伝導や多様な磁気現象の解明である。一方 、これらと必ずしも無関係ではないがf電子の持つ軌道自由度の振舞いについても最 近注目されている。その中から「四重極転移」における最近の話題に関連して我々の グループの研究の一端を紹介する。 高対称な磁性化合物では磁性イオンの結晶場基底準位に軌道縮退が残ることがある。 この軌道自由度は多くの場合、格子との相互作用により構造相転移を伴う軌道整列を 引き起こす(協力的Jahn-Teller効果)。しかしある種のf電子化合物では結晶歪みや 原子変位を伴わない軌道整列(2次転移)が極低温下で起こることが知られている。 このような相転移は軌道間交換相互作用によるものと考えられており、協力的Jahn-T eller効果とは区別して四重極転移と呼ばれる。四重極転移で特に注目されるのは軌 道が交替的に整列する場合(反強四重極(AFQ)転移)であり、その典型物質が立方晶C eB_6(転移温度T_Q=3.3K)である。CeB_6の相図の特徴はT_Qが磁場とともに顕著に増 大する点で、その原因については長年にわたる議論があった。ところが最近になって AFQ転移を示す物質(TmTe, Ce_3Pd_20Ge_6, PrPb_3、いずれもCubic)が相次いで発 見され、いずれもT_Q(H)が増大を示すことからかなり一般的現象であることが明らか になった。ここでは我々のグループによるPrPb_3(T_Q=0.4K)の実験例を紹介し、T_ Q(H)の上昇の機構について考察する。AFQ相において一様な磁場をかけると、同じ秩 序波数を持った反強磁性モーメント(一般には磁気多重極モーメント)が誘起される 。この磁場誘起モーメント間の磁気的相互作用の結果としてT_Q(H)の上昇が統一的に 理解できる。時間があればCe_1-xLa_xB_6で見いだされた新奇な磁気秩序相について も紹介する。

 

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