物性談話会98
Division of Physics, Grad. Sch. of Sci., Hokkaido Univ.
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・題目:
酸化物高温超伝導体における電子相関効果
・講師:
大川 房義氏(大川・北研究室)
(by Fusayoshi J. Ohkawa)
・日時・場所:
5月29日(金) 13:00-14:00
大学院講義室(2-211)にて
(5/29 (Fri) 13:00-14:00 @ Lecture Room (2-211))
・要旨:
ホールのドープされていない銅酸化物はモット・ハバード絶縁体である。ホールがドープされ金属になっても光放出電子 (PES) のスペクトルには大きな変化がないので、超伝導状態でも上部・下部ハバードバンド間にハバード (擬) ギャップが開いていると考えられる。高温超伝導機構解明の問題は、この様な強相関電子系を如何に理解するかという多体問題である。多体問題では二つの概念、「対称性の破れ」と「断熱的連続」が重要である。これらは、超伝導、液体ヘリウム3、近藤効果などの多体問題の研究をとおして明らかになった概念であり、物性物理以外の分野にも応用されている。この二つの概念を指針とした理論展開から得られた結果をもとに銅酸化物の実験事実を眺めると、高温超伝導の機構として次のシナリオが有望である。局所量子スピン揺らぎの効果(近藤効果)により、重い準粒子が形成される。ハバード擬ギャップ内に形成された Gutzwiller-Brinkman-Rice の重い準粒子バンドは近藤-Abrikosov-Suhl共鳴状態にほかならず、高温超伝導体も近藤温度1000K程度の近藤格子に分類できる。この重い準粒子が超交換相互作用のため異方的 (dλ波) クーパー対をつくり凝縮する。超交換相互作用は、それ自身により発達した反強磁性スピン揺らぎにより増強され、増強された部分共々クーパー対形成に効く。増強された部分は、いわゆる現象論的スピン揺動機構による相互作用と類似の形をしていて、それの微視的説明になっている。
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