北海道大学 / 理学研究科 / 物理学専攻

物性談話会'01

Division of Physics, Graduate School of Science, Hokkaido University


超伝導状態の輸送方程式における
ゲージ不変性とホール項

北 孝文氏(物性理論研究室)

6月29日(金) 13:00-14:00
大学院講義室(2-211)にて


ボルツマンは1872年,希薄気体の非平衡状態を記述する輸送方程式を提出し,これを用いて 有名なH定理を証明した。その後1956年ランダウは,強く相互作用するフェルミ粒子系に 同じ方程式を適用し,ゼロ音波の存在等を予言したが,それらの予言は後に見事に実証された。 この輸送方程式(ランダウ-ボルツマン方程式)の微視的導出に関する研究は, 1960年代に活発に行なわれた。 その結果,(1) なぜ強く相互作用する系に希薄気体の方程式が適用できるのかが明らかになり, (2) より広い適用範囲を持つ方程式(準古典方程式)が導出され, (3) 超伝導状態などの秩序相についても輸送方程式が導かれた。 しかしこの微視的導出法では,ホール効果が記述できないという問題点があった。 超伝導状態のホール効果については,符号反転問題などの未解決の問題がある。 今回,方程式のゲージ不変性に着目した研究により,ホール項の導出に成功したので 報告する。