Division of Physics, Graduate School of Science, Hokkaido University
ボーズ・アインシュタイン凝縮相の新たな平均場理論
北 孝文氏(物性理論II研究室)
5月11日(水) 15:00-16:00
大学院講義室(2-211)にて
理想ボーズ統計に従う同種粒子の集団は、 ある温度T0以下の低温で、 統計性に起因する有効引力により 同一の一粒子状態に落ち込んでゆく。学部の統計力学でも学ぶこの現象は、 「ボーズ・アインシュタイン凝縮」と呼ばれ、 1924年にアインシュタインにより理論的に予言された。 しかし、4Heなど現実のボーズ粒子系では、粒子間の相互作用が強く、 アインシュタインの理論は適用できない。 ようやく1995年に至って、レーザー冷却された希薄アルカリ原子気体で ボーズ・アインシュタイン凝縮が実現され、「実験と理論の詳細な比較が可能な系」として 活発な研究が続いている。 しかし、フェルミ粒子系に較べ、相互作用するボーズ粒子系の場の量子論は大変難しく、 特に有限温度に対しては確立した理論が無いのが現状である。 例えば、弱く相互作用するボーズ粒子系に対してさえ、転移温度Tc の表式も確立しておらず、比熱、凝縮粒子数、超流動密度の温度変化も わかっていない。 今回、この弱く相互作用するボーズ粒子系に対して、新たな平均場理論を 構成したのでその結果について報告する。 この理論は、低エネルギー励起が「フォノン・スペクトル」を持ち、 また動的現象に適用すると「粒子数・運動量・エネルギー保存則」 を満足するという、厳密な理論が持つべき条件を2つとも満たす 初めての平均場理論である。