Division of Physics, Graduate School of Science, Hokkaido University
有機超伝導体における電子の局在性と遍歴性
T*の起源について
河本 充司氏(低温物理学研究室)
6月8日(水) 15:00-16:00
大学院講義室(2-211)にて
有機伝導体は、オンサイトクーロン反発U、とバンド幅Wが拮抗し酸化物超伝導体や、重い電子系と同じく強相関電子系と考えられ数多くの理論的、実験的研究がなされている。有機超伝導体、なかでもk-(BEDT-TTF)2X は、温度圧力相図において超伝導相と反強磁性秩序相が隣接しており、またNMRの緩和率
(T1T)-1 がT*と呼ばれる温度でギャップ的な振る舞いを示すことなど酸化物超伝導体に似た挙動により興味が持たれてきた。このT*と超伝導との関連性について多くのシナリオが存在するが、我々は、スピンの自由度という側面からは13C-NMR また電荷の自由度という観点からは光学スペクトルを手法を用いてアプローチしている。この2つの相補的な実験手法より、T*では、局在的な電子が、より遍歴的な電子系にクロスオーバーしているという結論を得ることができた。このような電子系の遍歴性の増大は、最近、
Merino らによるdynamical mean-field theory による計算からも示唆されている。今回は、この問題に対する我々のk-(BEDT-TTF)2Xにおける13C-NMR、光学スペクトルの実験について、有機物での実験の特徴も踏まえて紹介したい。