Division of Physics, Graduate School of Science, Hokkaido University
Josephson effect in unconventional superconductor junctions
浅野 泰寛氏(北大・工・量子物理)
12月8日(水) 15:00-16:00
大学院講義室(2-211)にて
常伝導体と超伝導体の接合(NS接合)では接合界面においてAndreev 反射と呼ばれる超伝導特有の現象が起きる.その結果,例えばNS接合のコンダクタンスや超伝導体/常伝導体/超伝導体(SNS接合)における Josephson 電流などの量子輸送現象がAndreev反射によって支配される.超伝導体の中には従来の単体金属で発生する等方的な超伝導(s 波超伝導,BCS 超伝導)の他に,いわゆる異方的な超伝導体が存在する.例えば,酸化物高温超伝導体(HTSC)で発現している d 波対称性の超伝導や重い電子系で発生するp 波超伝導が知られている.これらの対称性は Cooper 対の実空間的な組み方を表わしており,異方的超伝導体の結晶中ではクーパー対を組む2つの電子がその相対角に関して内部自由度を持つことになる.例えば結晶格子の上に立って見た場合,ある方向にはクーパー対を組みやすいが,別のある方向では全くクーパー対が出来ないという具合である.この内部自由度こそがゼロエネルギー状態(ZES)と呼ばれる共鳴準位の母体となる.
我々は汚れた常伝導体(平均自由行程がその大きさに比べて十分小さい)を異方的超伝導体で挟んだSNS接合におけるJosephson電流を調べてきた.従来s波のSNS接合では,常伝導体にCooper対が染み込む近接効果によってJosephson電流が流れると理解されている.我々は汚れた常伝導体の内部における近接効果の有無と超伝導体の表面に発生するZESの有無によって,Josephson効果はその特徴的な振る舞いを質的に変えてしまうことを明らかにした.近接効果の消失とZESの発生はどちらも,ペアポテンシャルの符号変化に起因する輸送現象であり,異方的超伝導体の特徴である.
講演では,BCS平均場理論からBogoliubov-de Gennes 方程式を導き,その解から得られる Andreev 反射という物理現象を概観した後,Andreev 反射と Josephson 効果の関係を説明する.次に異方的超伝導体におけるAndreev反射の振る舞いとZESの発生の関係付ける.そして様々な系におけるJosephson電流と位相差の関係を紹介する.その後,SNS接合において,乱れたポテンシャルの影響を議論する.最後に我々が最近取り組んでいる問題,有機超伝導体のJosephson 効果,スクッテルダイト超伝導体のトンネルスペクトル,ルテニウム酸化物のSQUIDにおける干渉効果について簡単に触れる.