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ストリークカメラ

研究情報

 ストリークカメラは物質の発する一瞬の発光を、10ピコ秒(1000億分の1秒)の分解能で観測すること のできる装置です。その仕組みは以下の図のようになって います。物質から発せられた光はレンズ系を通って分光器に入射します。スペクトル分解された光はストリーク管の光電面にあたり、光電効果によって電子に変 換されます。電子 は高電場によって加速され、MCP(マルチチャンネルプレート)へ向かうのですが、この途中に非常に速い速度で振動する電場を印可しておくと、電場が上向 きのときには電子は下へ曲げられ、電場が下向きのときには上へ曲げられるので、時間によってMCP上で電子の到達する場所が異なることになります。この電 場の振動と、入射してくる光のタイミングをうまく合わせることによって、スペクトルの時間分解が可能となります。

現在の研究内容

1. 酸化亜鉛の内部を2光子励起したときの励起子発光のダイナミクス

 酸化亜鉛は室温で3.37eVという大きな禁制帯を持つため、赤外線から紫外線までの広い範囲の光を発生させることが可能です。また、室温においても励起子 が安定なため、発光効率も上げやすいという特徴があり、近年応用研究が盛んにおこなわれています。ところが、肝心の酸化亜鉛自身の性質についてはよくわ かっていないことがたくさんあります。例えば、酸化亜鉛の光学特性は表面の状態に非常に敏感であり、酸素中、水蒸気中、真空中で大きく特性が変わります。 その性質を利用して、ガスセンサーにも使われるくらいです。そのため、表面の発光を見ていたのでは酸化亜鉛本来の特性を知ることはできません。当研究室で は2光子励起という手法を用いて酸化亜鉛内部を直接励起し、内部からの発光をストリークカメラで観測することによって、表面の状態によらない酸化亜鉛本来 の性質を調べています。

2. 半導体ナノ微粒子中の光過程

 半導体をナノメートルサイズに切り出すと、それまで見えなかった電子の波動性が色々な現象に顔を出すようになります。これを量子閉じこめ効果といいます。量 子閉じこめ効果は、電気伝導、磁性、構造変化等いろいろな現象に影響を与えますが、最も大きな変化は光学特性に表れます。電子のエネルギーは原子のように とびとびの値しかとれなくなり、発光や吸収スペクトルもとびとびになります。また、閉じこめが強くなると電子や正孔の運動が制限されるようになり、それに よって格子振動や表面振動との関わり合いも大きく変わってきます。当研究室では、電子の波動性によるこれらの変化を、光学特性を調べることによって明らかにしようとしています。