生体関連物質水溶液

研究情報

 アミノ酸やタンパク質といった生体関連物質の水溶液には、溶質分子、溶媒分子、両者の相互作用の揺らぎが共存し、お互いに関係し合っています。その分子論的メカニズムの解明は、単に水溶液の物性物理学的理解にとどまらず、生命現象の物理学的理解の基礎となり得る魅力的な研究です。アミノ酸などの比較的小さい分子の水溶液では、溶質分子が水和水を伴い並進・回転拡散し、溶媒である水の体積分率は減少し、高濃度の場合は水の分子運動も影響を受けます。一方、巨大棒状タンパク質分子であるコラーゲンの水溶液では、コラーゲン水溶液の高粘性に水は直接的に関与せず、高粘性は主としてコラーゲン分子が作る高次ネットワーク構造に起因すると考えられています。このように、生体関連物質水溶液の局所液体構造や分子ダイナミクスは、溶質分子の違いに多彩に変化します。私たちは、様々な生体関連物質水溶液の分子ダイナミクスの研究を行い、複雑液体の一つの側面として生命現象を理解したいと考えています。