過冷却液体のガラス転移

研究情報

 ふつう液体を冷却すると結晶化しますが、様々な要因により凝固点を過ぎても結晶化が始まらず、過冷却液体になる場合があります。そのまま冷却を続けると、ガラスと呼ばれる硬い状態に移行します。これを液体のガラス転移と呼んでいます。ガラスは「固体」ですが、結晶固体とは異なり構成分子の配列は液体と同じく不規則で、アモルファス固体と呼ばれたりします。今では、ガラス転移はすべての複雑液体の普遍的性質と位置付けられていて、その分子論的メカのズムは物性物理学の未解決課題の一つになっています。冷却により物質がガラスになるためには必ず過冷却状態を通過しなければならず、過冷却液体における分子運動の変化がガラス転移を支配しているという考え方もあります。したがって、過冷却液体における分子運動の観測がガラス転移の分子論的メカニズムの解明に重要と考えられ、私たちは超低周波誘電分光装置を開発し、様々な複雑液体の過冷却状態の分子ダイナミクスの研究を行っています。