数理物理学研究室を志望する人へ(大学院生募集)

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サッカー選手,小説家,画家,ピアニスト,いずれも一芸に秀でるその道のプロフェッショナルです。これと同じように,物理学者は物理学研究のプロ,世の中の森羅万象を解き明かすことに長けた専門家と言うことができます。理学研究院はこの専門家養成学校であり,理学部4年間との大きな違いは,『勉強』から『研究』へ大きく舵を切ることに尽きます。その中でも理論物理学は,難解な概念や幾重にも連なる数式に覆われ,強面に見えるかもしれません。この観点から,5年間じっくりと腰を据えて取り組むことが望ましいと言えます。即物的価値観から解放され知的好奇心のみに駆られて日夜努力する直向さ,現況では夢物語に思えるアイデアを着想する純粋さ・大胆さが必要です。社会に出てサラリーを取るまでの道のりは,地道かつ長いものですが,苦難ばかりではありません。昨今新聞誌面を賑わす光スイッチング・デバイス,有機伝導体,カーボン・ナノチューブ,単分子磁性体,スピントロニクス,量子コンピュータ;こうした最先端研究の第一線に頭脳として参画することの喜びと醍醐味は,研究者の特権と言えます。この鍛錬を見事成し遂げて博士号を取得した暁には,大きな自信と人生の羅針盤を獲得することでしょう。その先には,大学(理学部,工学部,教育学部等)や研究所(国立,民間)における文字通りの研究者は勿論,特許庁専門員,航空管制官,科学雑誌編集者など,個々人の才能,執念,機転次第で,多種多彩な道が開けています。

物事の理―ものごとのことわり―に純粋な好奇心を抱いて止まない若者を,当研究室では募集します。当研究室のスタッフは,京大,阪大,東北大,岡山大,横浜国立大,そしてハノーヴァ大(独)において,研鑽を積んできました。新しい環境は新しいアイデアを生み,新しい出会いは万感の笑顔を生むことを,肌で知っています。実際に,国内外複数の大学から学生を受け入れており,留学生が居る時には,英語のセミナーや,ワインの夕食会など,楽しみも増えます。博士前期(修士)過程,後期課程共に,学外からの受験を歓迎します。何の心配も躊躇も要りません。

研究活動の本質的ステップを要約してみます:

   1)テーマを探求・選定し,トピックを見つけ出す・創り出す;
   2)的確な方法論を習得し計算に励む;
   3)関連・先行研究と比較し議論を深め,理論を洗練する;
   4)論文執筆・投稿・閲読審査・発表。

研究者として自立する上で最も大切な要素は,1)を持続的に遂行するセンスということができます。2)は確かに難しいですが,スタッフの知見を踏み台にすることはできます。3)も最初スタッフの経験に依りますが,学会活動を通して自らも人的ネットワークを作ってゆきましょう。4)は語学の問題だけでなく,企画力・筆力・精神力・度胸までも問われますが,経験を重ねてきっと乗り越えることができます。こうして多くを成し遂げてふと我に返ると,1)の壁が高く立ちはだかっていることに気付くでしょう。1)は学者にとって生涯の課題であり,我々スタッフとて終ったということはありません。社会に出てあらゆる方面で科学者として活躍するために,1)に対する姿勢を受動から能動に換え,考え方を不安から喜びに変える;当研究室では5年間の究極目標をここに設定します。修士課程では2)に邁進し,学外(の学会・研究会)に出て3)のための知識を蓄積しましょう。意欲と行動力のある人は,4)にも手が届くかもしれません。博士課程に進学したら,すぐにとはいかないまでも,絶えず1)を意識しましょう。5年間のうちに,もし自ら1)の苦悩を経験し,曲がりなりにも乗り越える(果実は博士号取得後にずれこんだって構いません)ことができたら,学会に対して自信をもって自分を売り込みましょう。ダイヤモンドの原石を拾い上げる目利きが,必ず現れるでしょう。

理論とて,研究を遂行するためには資力も必要です。国の各種予算は勿論,民間財団に対してもアピールします。広い意味でのマンパワーも必要です。最初の理論は1人で出来ても,物理学は『観る』学問です。実験グループに働きかけ,信頼関係を作り,やがて大輪の共同研究を実現させましょう。サッカーのティーム・プレイにも似て,喜びは何倍にも増幅されるでしょう。自己満足で終らず,成果を広く発信しましょう。国際会議に出る,シンポジウムを企画する,これも研究です。このように学問の世界とて,純粋な研究に付随して,さまざまな人間の営みが不可欠です。学位の先にもこのように延々階段は続きますが,全力投球の大学院5年間,充実の20代を送った君には,きっと不屈の闘志と確固たる自信が備わっており,こうした作業や努力も喜びに変わっているでしょう。

聞くところによると,北海道大学キャンパスは,学生好感度アンケートで1位だそうです。春先には,鴨の親子が道路を横断して池に戻る姿が見られます。芝生には小川のせせらぎ,夏も涼しい原生林。秋には,黄金の銀杏並木が歩行者天国になります。そして勿論,冬は一面の銀世界。我々の研究室は最上階11階にあり,そこからの眺めは絶景です。晩秋初冬には,雪化粧する紅葉も観られます。さあ,この自然溢れる北の大地で,自然科学の真髄,物性理論の世界に,あなたも飛び込んでみませんか。